コーヒーバネット

 「違いがワカル男」風にコジャレタ言い方で、「風に漂う羽毛のように軽やかな酸味が特徴的。サッパリしてるが、どこか懐かしい都会の風景のよう」と、意味不明な表現でコーヒーを嗜む私。仕事の合間に1杯、自宅で1杯「I drink two cups of coffee almost every day.」を楽しんでいるが、この2杯の味が全くの別物。職場で飲むコーヒーは「雑味がなくスッキリした味」で、まさに私好み。自宅でも同じ豆を頂いてるが「濃いめで複雑なアロマ」を感じる。どちらもペーパードリップで落としているが、違いがあるとすれば水?自宅では浄水器を通したアルカリイオン水、職場では水道水。浄水器を通すと水のクラスター値が低くなり(分子が細かい)、より濃く抽出するせいだと思っていた。

 日常の何気ない行為も、別の視点から本質が見えてくることもある。自宅では、カリタの陶器ドリッパーに台形の紙フィルター。職場では、簡便に扱えるということでユニフレームのコーヒーバネットに円錐形の紙フィルター。ここに大きな原因があることに気づいた。アウトドア派でなければ、コーヒーバネットに縁がないかもしれないが、いわゆるキャンプ用のドリッパー。針金をグルグル巻きにしてあり、折りたたむと持ち運びに便利というモノ。こんなみすぼらしい姿のドリッパーだが、何故かスッキリ味のコーヒーを落としてくれる。

コーヒーバネット コーヒーバネット

コーヒーバネット インターネットで調べると、私と同じように感じる人は多いらしい。もっともらしい理由も書いてある。「蒸れない」とか「落ちるスピードが速い」とか etc. 科学的に解き明かすと答えは出るのだろうが「エンジンの構造を知らずとも、クルマは走る」と同じ理屈で私には「そんなの関係ねぇ」。旨ければ、それだけでイイ。

 もともと砂糖やミルクを使う人には、無意味かもしれないが、ブラックで飲むと「穴が3つのカリタ君」や「穴が1つのメリタさん」で淹れたモノと違うことがハッキリ認識できる。「コーノ君」とは円錐フィルターという共通点はあるが、やはり似て非なる味わい。いずれにしても嗜好品なので、個人の好みが分かれるところ。人によっては「薄い」と表現するかもしれないが、スタバや宮越屋のコーヒーを濃すぎると感じる人にはベストマッチかも。

 ちなみに写真のバネットは、昔に買った二脚式。今では、ヴィンテージ物となってしまった。現在は、三脚式になり安定感が増したが針金がやや細めになっている。円錐式フィルターの純正品は高いので「ハリオ」を使用している。紙フィルターで淹れると「紙くさい味がする」と感じる人もいるらしいが、私はフィルターにタップリのお湯を注いで充分に湿らせてから挽いた豆を入れる習慣があるので気になったことがない。機会があれば、バネットのミラクルな味を試してほしいものです。

許せる勘違い

 忘年会で呑んだ夜、遅くに帰宅すると「○○さんが見えて、ウナギパイ頂いたよ」と家内。「ウナギパイ?お土産かな?」「今年一年、お世話になりましたって言ってたよ」「ふーん、で、どこにあるの?」「箱のまま、仏さんに上げてある」という何気ない会話。仏さんに上げるというのは、もちろん仏壇に供えると云うこと。

「なんで、ウナギパイなんだろ?旅行にでも行ったんかな?」
「年末の忙しいときに、旅行なんか行くかなあ?」
「夜のお菓子で精をつけて、頑張れってか?バカだねぇ、アイツ」
「ウナギが好きだという私に、シャレでウナギパイ?」。次々に浮かぶ疑問!

川口水産うなぎ蒲焼 どう考えても解せなくて、しばらくしてから「ホントにウナギパイか?」と聞くと「たぶん」

 仏壇から下ろしてみると、たしかにお菓子の箱に見えなくもないが「春華堂」ではなく「うなぎ蒲焼・川口水産」と書かれた包装紙。「エーッ、違うやん!」。開けてみると、なんと立派な国産ウナギの蒲焼きが3枚。「要冷凍」と書いてある。触ってみると、まだ半解凍状態なので即冷凍庫へ。早く?気づいたからイイようなもの、そのまま一晩仏壇に置いてたら、せっかくの高級ウナギ様が台無しになるところだった。

 世の中には、許せる勘違いと許せない勘違いがある。ウナギの蒲焼きとウナギパイを間違えるなんて、とてもじゃないが許せるはずもないが、そこはそれ、ウナギンの効能でヤサしくなれる私なので腹も立たずに一件落着。それにしても今年はウナギの当たり年。幸せな気分で年の瀬を迎えることができ、有り難たいことです。

秋の風物詩

野花南山荘の効用 雪虫

 暑い暑いと云っていた今年の夏だが、一気に秋が来て、もうすでに山荘では雪虫が飛ぶ季節。水彩絵の具を薄めるような季節の移り変わりというボカシ効果もなくストンと秋になり、いきなり冬を迎えるという慌ただしさを感じている。62才になると、時間は時速62キロという早いスピードで流れる。歳を重ねる度に時間の流れが速くなり、季節の微妙な変化を感じる間もなく歩き続けているのかもしれない。

大根干し 久々に晴れ渡り、気持ちの良い青空が広がる。ベランダに干した大根も雨よけのブルーシートを外し、おもいきり陽に当てる。このまま干し上がると、来週には漬けられそうな気配。今年も旨い玄米漬けが食べられる。毎年繰り返される秋の慣わしだが、こうして今年も続けられることに感謝。

 感謝と云えば、毎年、長野から送られてくるカリン。今年も信州の香りを乗せて我が家へやってきた。1年に1度味わう贅沢な秋の香り。玄関を開けるとウットリする芳香が私を迎えてくれる。香りを言葉で表現するのは難しいが、優しく甘く爽やかな桃のようなマンゴーのような。この季節にだけ届く花梨は、天高く澄み渡る秋の空のイメージと重なり、清々しい気持ちにさせてくれる自然のアロマテラピー。これから2~3ヶ月は、この贅沢な香りが我が家の家族を幸せにしてくれる。今夜から、枕元に置いて甘い香りの夢を見ようと思う。

 落葉松林でも冬が近いのを肌で感じるのか、焦るがごとくシメジ類が所狭しと群生している。アイシメジが終わりシモフリシメジの出番。これを採り始めるとカゴがイッパイで持ちきれなくなるので、次に持ち越し。今日の成果は、アイシメジとアカモミタケ、ラクヨウとムラサキシメジ、ジナメコ。今夜は早速、炊き込みご飯とキノコの味噌汁を頂いた。 香りで幸せを感じ、味で幸せを噛みしめる。北国の短い秋を満喫している。

カリン アイシメジ、アカモミタケ、ラクヨウ、ジナメコ、ムラサキシメジ

 週末から地元を留守にしていたため、野花南散策は久しぶり。少しずつ秋が進みラクヨウも終わりの時期を迎え、これから晩秋のキノコが森を賑わす。今日も多くの見知らぬキノコ達と出逢い、数少ない知識と図鑑を頼りに名前を探す迷走の旅へ出かけた。どんなことでも初体験は気持ちイイに決まってるが、見知らぬキノコを初めて口にする場合でも、そう云い切れるかどうか。充分な調査と慎重な覚悟と少しの勇気が必要。

カラカサタケ 今日一番の収穫は、地面にそびえ立つ巨大なキノコ。なんと傘の直径26センチ、高さ30センチ。「デカッ!」というのが第一印象。次にキタのが「喰いごたえある」というイメージ。カゴと比べると巨大さが一目瞭然。家に帰り図鑑で調べたが特定できず。「大きいキノコ、巨大キノコ」をキーワードに検索の結果、いくつかの候補に絞られた。「オオオニテングタケ?」「猛毒のフクロツルタケ?」「カラカサタケ?」「ドクカラカサタケ?」、インターネットの不確かな情報でも数多くの画像を見比べていくと、それなりに違いが見えてくる。決め手となったキーワードは「柄のまわりにあるツバが上下に可動する」。やってみると、実際にビラビラする膜状のツバが指輪のように上下に移動する。この段階で最も可能性が高いのは「カラカサタケ」。

 wikipediaによると「従来から食用とされる。天ぷら、炒め物、きのこ汁等加熱した上で利用されるが、生食は消化器系の中毒を起こす。蕁麻疹、下痢、アレルギーを起こすこともある。無味、無臭」。なあーんだ喰えるじゃん。ノミネートされた他のモノは、すべて毒キノコ。「よし、カラカサタケに決定!」。プラス思考というか、自分に都合のイイように話を持っていこうとする傾向がある私。「なんとしても喰ってみたい」という気持ちが無意識に働き、判断をミスリードしている可能性もあるが「ま、いいでしょ」。

カラカサタケ カラカサタケ

 ただ、ひとつ心配なのは「ドクカラカサタケ」。別名を「コカラカサタケ」といい、カラカサタケほど大きくはならないとあるが、「大きいコカラカサタケ」は「小さいカラカサタケ」より大きいはずで、あまり当てにならない。傘の裏ヒダは白く、見た目に区別できないが傷つけると赤変するので判別できると書いてある。この点はクリアしてるのでOKとは思うが、万一間違っても嘔吐や下痢の胃腸系中毒なので遺言を書くまでもないだろう。真夜中の下痢なら、野花南産ポルチーニの「単なる喰い過ぎ」で経験済み。

 一抹の不安を残しつつも喰えるとなれば早速、下準備。柄と傘を切り離し塩水につけて虫出し。それにしてもデカイ!開ききった傘は、トウキビを茹でる直径30センチの大きな鍋いっぱいを埋め尽くす。柄は細かく刻んで冷凍、ハンバーグなどに混ぜて使う予定。今夜のメインディッシュは「カラカサタケのフライ」。傘を8分の1にカットして豚カツの要領で揚げる。見た目は魚のフライそのもの。熱々のフライにトンカツソースをかけてナイフを入れる。サクッとした触感のあと、スッと切れるが切り口はつぶれてしまう。熱々の一切れを口に運ぶと、ん?何かに似てる。これは、まるで茄子のフライだ。中身がトロトロで、フライの衣だけの食感。キノコの味?よくわからない。ほとんど味がない。ソース味のフライの衣を食べてるようだ。期待したほどのモノじゃなかったが、とりあえず食べられるキノコを見つけたことに満足。たぶん、バターで炒めたりシチューで煮込んだ方が美味しいかも知れない。食後2時間経ったが、タップリ油を吸った衣のせいで胃が重く感じる以外、体調に変化なし。

カラカサタケ カラカサタケのフライ

 「旨いべぇ!食べてみれや」と函館タナベの社長のように声をかけても、例によって「まだ、死にたくないもん」と横目で眺める家内。体型が示すとおり、実は大の揚げ物好き。自分のためには豚肉の豚カツを用意してある。外食でもないのに家にいながら夫婦別々のメニューを頂くようになれば、人生もそろそろ秋。実り多い秋となればよいが...

誰にでも伝わる幸せの味

 午後から2時間ほど空き時間ができたので、仕事を抜け出し山荘へ。ここ何年かキノコを探しているが、毎年決まって同じ場所に同じキノコが出る確率が高い。必然的にラクヨウを探すときも、まず最初は「ここ」という場所がある。いわば、私の秘密のラクヨウ畑。一昨日見たときは、全く気配なし。こんなに寒くなっても出ないなんて、今年は凶作と諦めていた。

ラクヨウキノコ ところが、なんと!キノコの神様は私を見捨ててはいなかった。例の秘密の畑、2日前とは大違い。今まで出れなかった分、一気に大放出。ココにもアソコにもラクヨウだらけ。舞茸ではないけれど、踊り出したくなるほどの大感激。待ちに待ったラクヨウちゃんとのご対面。まるでフィーリングカップル5対5の赤い糸で結ばれた時のような天にも昇る想い。

 早速今夜は、ラクヨウの味噌汁を頂いた。やっぱり「はあー、旨いなあ!」という声が出てしまう。なんで、こんなに旨いんだろう。世の中、いろんな旨いものがあるけれど、幸せを感じる旨さというのは、これしかないと思う。キノコの出汁の味噌汁に大根おろしを入れただけのシンプルなもの。今年も味わうことができたので、寿命が5年ほど延びたような気がする。

 左下の写真が、本日の授かり物。ラクヨウにシロヌメリイグチ、ニセアブラシメジにタマゴタケ。今夜の夕飯は、ハナビラタケの炊き込みご飯とタマゴタケ入りの卵焼き、ラクヨウの味噌汁に塩鮭と漬け物。味噌汁をドンブリ2杯も頂いた。ほとんど山の恵みで生かされている。山の神とキノコの神様に感謝。

ラクヨウキノコ ラクヨウキノコ

 いつものことだが、家内は私の採ってきたキノコは一切口にしない。だから、炊き込みご飯も卵焼きも私だけのメニュー。ところが、ラクヨウだけは大好物。今夜もドンブリにタップリの味噌汁を飲んでは「はあー、美味しいねぇ!」と声に出していた。やはり、幸せの味は誰でも感じるようだ。

白クマ塩おかき 旨いモノがあると、押しつけがましく配ってしまう。先日も旭山動物園限定「白クマ塩ラーメン」をお裾分けしたら、先様からお返しに「白クマ塩おかき」という土産を頂いた。二番煎じを狙ったとしか思えない同じデザインのパッケージ。「オホーツクの塩使用」と書いてあるが、とにかくショッパイ!口に入れると、まるで海で溺れてるようだ。きっとこれは、オホーツクの海水の味を再現したモノに違いない。ということは、白クマが食べるおかきなのかい?それでも、どうにかして食べようと試みる喰い意地の張った私は、塩気を落とそうとザルにあけて振るってみた。でも、無理!ギブアップ。結局、親の教えに背いて食べ残すことに。たまたま、製造過程で底に溜まった濃い塩味のところだけ袋詰めされてしまったのかも。

 同時に頂いた土産が、札幌円山動物園限定「白クマ塩ラーメン」と「熊出没注意」醤油・味噌ラーメン。こちらからの「旭山」に対して「円山」で返してくる洒落たセンスには嬉しくなる。白い袋、円山動物園のオフィシャルキャラクター「ピリカ」という名のホッキョクグマを模したデザインはイケてるが、熊出没注意の奇をてらったデザインもここまで徹底されると、なんとなく北海道が馬鹿にされているように感じるのは私だけなのだろうか。昔、木彫りの熊が北海道土産の代名詞のように云われていた時代、土産物屋の片隅に飾られた熊出没注意の暖簾やTシャツの垢抜けない姿が北海道の貧しさを卑屈に表現しているように感じていたあの頃の記憶がよみがえるせいかもしれない。

円山動物園白クマ塩ラーメン 熊出没注意ラーメン

 だが、外見で中身を判断できないのは、日本一旨いインスタントラーメンの称号をもつ旭山の白クマラーメンで実証済み。今回頂いたラーメンすべてが、旭山白クマと同じ製造元「藤原製麺」の製品。マズかろうはずがないということで実食。私は熊出没味噌、家内は熊出没醤油を頂いた。うーん、インスタントの域は超えているが、お店の味そのものと云うには無理がある。旭山塩ラーメンによく似た麺だが、この細麺は味噌や醤油には合わない。どうやら、藤原製麺シリーズでは、塩味がベストのようだ。マズいと云ってる訳じゃないので誤解のないように。インスタントにしては、かなりハイレベル。きっと、あの田村正和なら「間違えましたあ」と叫ぶはず。

 残った1個がシリーズ中ベストの塩味、その名も同じ「白クマ塩ラーメン」。「旭山」が勝つか「円山」が勝つか、その結末はいずれの機会に...

バリスタの言語能力

 朝起きて一番に湯を沸かし「煎茶」を淹れる。亡くなったオフクロの口癖「朝茶は、その日の基礎になる」を今でも実践している。残りの湯で「千草28茶」を煎れ、ステンレスポットに移し職場へ持って行く。午前の休憩に、この温かいお茶を頂きながらホッと息をつく。家に戻り昼食後「玄米茶」を呑んで昼寝。寝起きに「抹茶」を一服頂いて午後の仕事へ出掛ける。午後から暇な私は、読書をしながらゆっくり「コーヒー」を落とし至福の時を過ごす。夕餉のあとは「焙じ番茶」。一日中、お茶に接して過ごしているのは「好きだから」というより「生活の一部になっている」からだと思う。

 ときどき台湾茶も頂くが、本当に旨いモノは高価なので、そうそう口に入らない。「阿里山高山金萱茶」や「文山包種茶」は100g7~8千円もする。そんな特別な頂き物でもない限り普段は、うおがし銘茶の「しゃん」という煎茶、玄米茶は「茶太郎」、焙じ茶は「はいから」というのが我が家の定番。「どうせ頂くなら、美味しい方がイイ」というのがモットーだが、これでなかなか難しいのがコーヒー。豆の種類や焙煎の具合、淹れ方によってまったく味は変わるが「雑味がなくスッキリした白湯の中にコーヒーの味がする」というのが私の好み。言葉で表現するのは難しいが「苦すぎず酸っぱすぎず濃すぎず薄すぎず、無味無臭の透明な湯の中に奥深いところから立ち上がるコーヒーの香りと深い味わい。まるで銀紙を噛んだときのような味」と云ったら、余計わかりにくくなったってか?

タリーズコーヒー 先日、タリーズのコーヒー豆を頂いた。ブラジル、キリマンジャロ、マンデリンの3種。親切にもそれぞれの袋に味の特徴が書いてある。例えばマンデリンの場合「大粒に揃ったこのマンデリンは、華やかで甘いアロマ、大地を感じる力強いコクが特徴的です。マンデリンらしいバターのような風味がその味わいに深みを加えます」という具合だが、読めば読むほど理解できない。大地を感じる力強いコクって何だ?そもそもコーヒーなのにバターの味がするのか?イッタイどんな味なのさ?

 いわゆる「バリスタ」と呼ばれるコーヒーの専門家が、プロとして豆の特徴を表現しているのだろうが、言語能力に限って云えば「銀紙のような」としか表現できない私とたいして違わないような気がする。そこで、実際に飲んでみた。「うわっ!濃い!苦い!」というのが、マイ・ファースト・インプレッション。まるで苦すぎるエスプレッソ。これは豆の持ち味じゃなく淹れ方に問題があるようだ。そのせいか、大地のコクもバターの味も銀紙の味もしなかった。

 味を言葉で表現するのは難しい。旨いモノは旨い、不味いモノは不味いとしか云いようがないが、世の中そう単純に割り切ってしまうと「バリスタ」も「ソムリエ」も、おまんまの食い上げになってしまう。だから、私もあえて「違いがわかる男」の振りをしてコジャレタ言い方で表現してみよう。淹れ方さえ間違わなければ「風に漂う羽毛のように軽やかな酸味が特徴的。サッパリしてるのに、どこか懐かしい都会の風景のようにコッテリしている。口に含んだ瞬間、舌が痺れるような苦みを楽しむことができます」なんてのは、どうだ。

幻の利久堂かりん糖

 旅の始まりは金曜の夜、千歳空港温泉でノンビリ。サウナやジャクージで汗を流し蕎麦屋で夕食。板わさで生のジョッキをグビグビ。イカめしで熱燗をチビチビ。仕上げにセイロ1枚頂いて、空港内のホテルでグッスリ。

 翌早朝、千歳発仙台経由山形へ。夏とは思えぬ涼しい気候に一安心。会議の前に蕎麦屋で昼食を済ませ、デパ地下を目指す。温泉で有名な上山市にある小さな和菓子屋さん「利久堂」のかりん糖をゲットするのが、今回の旅の目的の一つ。というか、それこそが目的と云ったら会議の主催者に申し訳ないが。

利久堂かりん糖 10年ほど前、知人からの頂き物で口にしたことがある。「かりんとうの概念」が変わった。「今まで食べていたモノは、いったい何だったんだろう」という驚きがあった。ぜひまた、いつか食べてみたいと思っていたが、今回がそのチャンス。出発前にどこで買えるのかネットで調べておいた。

 手作りのため数に限りがあり、ほとんど地元で消費されるとのこと。もちろんネットでの販売もない。上山市のお店に行くか山形市内では大沼デパートでしか手に入らないらしい。向かったデパ地下で、目を皿にして探したが見つからず、店員さんに尋ねると毎週土曜日の午後2時に品物が到着し、売り切れたらゴメンナサイなのだそうだ。ちょうどこの時、土曜日午後1時過ぎ。まだ商品は到着しておらず、会議は1時半からのため2時の販売開始には間に合わない。そこで、予約取り置きをお願いした。10袋というリクエストに「お一人様3袋までです」。

利久堂かりん糖 何はともあれ、山形市内では毎週土曜日午後2時限定発売。お一人様3個まで!という幻の?「利久堂のかりん糖」をゲットすることができた。

 1袋630円で15本入り。長さ10cmくらいで生地の中央に切れ目があり捩ってある。カリカリサクサクの食感で生地に風味があり、黒糖の深い甘さとコクが上品ぶらず駄菓子の懐かしさを感じさせる。なによりも表面の光沢感というか艶がイイ。久しぶりに頂いたが、やはり、味もカタチも他のかりんとうとは一線を画している。

 ちなみに同じ上山市にある「大國屋」さんというお店でも「かみのやまかりんとう」を作っていて、こちらはネット販売しているみたい。

白クマ塩ラーメン

旭山動物園限定・白クマ塩ラーメン どんな世界にも卓越した人間というのは居るらしい。「TVチャンピオン・第1回インスタント麺通選手権」の優勝者、大山即席斎という人物がインスタントラーメン界の神様だという。この人一押しの「旭山動物園限定・白クマ塩ラーメン」を食べてみた。たしかにインスタントの域は超えている。上品な味のスープ、シコシコでノドゴシの良い麺。お店で頂くラーメンと大差なく旨い。その上、スープ用にお湯を用意しなくても、茹でたお湯をそのまま使えるので手軽で面倒ない。ただし、私にはスープが濃いめなのでお湯を少し足して頂いた。

 子供の頃から、お世話になったインスタントラーメン。カップ麺は食べないが、袋入りで今でも好きなのは「出前一丁」。仕上げのゴマ油の香りがたまらない。最近、「マルちゃん正麺」が旨いというので試してみた。たしかに少し違うが、麺がすぐに伸びてしまう。しょせん、インスタント麺はインスタントであるが故の個性を追求すべきと思うが「白クマ塩ラーメン」は、如何に生ラーメンに近づけるかという道を選んだのだろう。

 たまたま、インターネットで見つけた「日本一旨いインスタントラーメン」という記事を読まなければ、決して手に取ることもないだろうデザインのパッケージ。一昔前の北海道土産店に並んでいた「トド肉の缶詰」や「アザラシの缶詰」「熊肉の缶詰」のように奇をてらったモノにしか見えないが、実際に食すると旨い。と云うことは、トドやアザラシも、ひょっとすると旨いのかしら。

通販サイト:旭山動物園限定・白クマ塩ラーメン

ウナギンの効用

 地元で5本の指に入るという名店「いさみ」。昨夜、業界の集まりに期待を膨らませて出かけた。というのも、焼き鳥、鰻の旨い店として愛され続けて、ん十年。地元の鰻好きには垂涎の憧れの店。特にこの時期、タケノコを皮ごと炭火で焼いて、熱々の皮を剥きながら味噌マヨネーズをつけて頂く。今が旬の最高の美味。タケノコと云っても根曲がりタケという細いものだが、新鮮なものはトウキビのように甘い。

 我が業界のシキタリどおり予算が決まっていて、それに合わせて料理が運ばれてくる。刺身に始まり、殻付き生ウニ、タモギの卵とじ、焼き鳥、焼き牡蠣、焼き魚、タケノコの炭火炙りなどなど豪勢に食卓を飾る。ビールも焼酎も進み、残すはシメの鰻のみになった。お腹と相談すると小さな茶碗の「まぶし」が、ちょうどイイな。と、酔ったアタマで考えている宴もタケナワ。運ばれてきたのは、蒲焼き色の小さな物体。よく見ると焼きオニギリ。「まぶし」を小さく握ったのかしらと頂いてみると、正真正銘の焼きオニギリ蒲焼きタレ味...

 「うーん、敵もさる者。少ない予算と鰻高騰の狭間を埋める秘策、アッパレじゃ!」とは、ならんて。ウソでもカケラでも鰻を入れんかい。と、旨いものをタラフク食べて呑んできたにもかかわらず、ほんのちょっとの欲求不満を抱えたまま一夜が明けた。

 いつものように午前の仕事を終え、昼食に戻ると「わあ、ビックリ!」。浜松から浜名湖産の鰻の蒲焼きが冷蔵便で届いてるという。なんたって国産だぜぇ。ワイルドだぜぇ。早速、お昼に頂いた。焼き網に乗せ、尻尾の先に焦げ目がつくくらい魚焼き器で炙る。こうして頂くと、まさにお店の味。はあ、幸せだなあ!平日の昼間に、こんな贅沢してるのは我が家くらいなんじゃないのとリッチな気分で頂くと余計に美味しい。

 結局、昼食に「鰻蒲焼きご飯」、夕食には「うな重」を頂いた。1日に2度も鰻を頂ける日が来るなんて人生初の出来事、生きててヨカッタあ。まるで盆と正月とクリスマスと誕生日が一辺に来たみたい。もともと、鰻を頂くと精神的に落ち着く私。鰻に含まれるウナギンZの効果だと思い込んでいるのだが、今日はダブルで頂いたので、より効果の高いウナギンW が私の身体の中を駆け巡っている。

蒲焼き うな重

 でも、この展開はナゼ?とハタと気づいた。そういえば、浜松の親戚もときどきこのブログを読むらしい。こないだから「ウナギ、ウナギ」と書き続けてきたもんなあ。「アナタが、ウナギウナギって騒ぐからよ」と、家内にタシナメられた。そうか、そういうことか。ここで騒ぐと全国から旨いものが届くらしい。シメシメ、今度は何を騒ごうかしら...

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