週末から地元を留守にしていたため、野花南散策は久しぶり。少しずつ秋が進みラクヨウも終わりの時期を迎え、これから晩秋のキノコが森を賑わす。今日も多くの見知らぬキノコ達と出逢い、数少ない知識と図鑑を頼りに名前を探す迷走の旅へ出かけた。どんなことでも初体験は気持ちイイに決まってるが、見知らぬキノコを初めて口にする場合でも、そう云い切れるかどうか。充分な調査と慎重な覚悟と少しの勇気が必要。
今日一番の収穫は、地面にそびえ立つ巨大なキノコ。なんと傘の直径26センチ、高さ30センチ。「デカッ!」というのが第一印象。次にキタのが「喰いごたえある」というイメージ。カゴと比べると巨大さが一目瞭然。家に帰り図鑑で調べたが特定できず。「大きいキノコ、巨大キノコ」をキーワードに検索の結果、いくつかの候補に絞られた。「オオオニテングタケ?」「猛毒のフクロツルタケ?」「カラカサタケ?」「ドクカラカサタケ?」、インターネットの不確かな情報でも数多くの画像を見比べていくと、それなりに違いが見えてくる。決め手となったキーワードは「柄のまわりにあるツバが上下に可動する」。やってみると、実際にビラビラする膜状のツバが指輪のように上下に移動する。この段階で最も可能性が高いのは「カラカサタケ」。
wikipediaによると「従来から食用とされる。天ぷら、炒め物、きのこ汁等加熱した上で利用されるが、生食は消化器系の中毒を起こす。蕁麻疹、下痢、アレルギーを起こすこともある。無味、無臭」。なあーんだ喰えるじゃん。ノミネートされた他のモノは、すべて毒キノコ。「よし、カラカサタケに決定!」。プラス思考というか、自分に都合のイイように話を持っていこうとする傾向がある私。「なんとしても喰ってみたい」という気持ちが無意識に働き、判断をミスリードしている可能性もあるが「ま、いいでしょ」。
ただ、ひとつ心配なのは「ドクカラカサタケ」。別名を「コカラカサタケ」といい、カラカサタケほど大きくはならないとあるが、「大きいコカラカサタケ」は「小さいカラカサタケ」より大きいはずで、あまり当てにならない。傘の裏ヒダは白く、見た目に区別できないが傷つけると赤変するので判別できると書いてある。この点はクリアしてるのでOKとは思うが、万一間違っても嘔吐や下痢の胃腸系中毒なので遺言を書くまでもないだろう。真夜中の下痢なら、野花南産ポルチーニの「単なる喰い過ぎ」で経験済み。
一抹の不安を残しつつも喰えるとなれば早速、下準備。柄と傘を切り離し塩水につけて虫出し。それにしてもデカイ!開ききった傘は、トウキビを茹でる直径30センチの大きな鍋いっぱいを埋め尽くす。柄は細かく刻んで冷凍、ハンバーグなどに混ぜて使う予定。今夜のメインディッシュは「カラカサタケのフライ」。傘を8分の1にカットして豚カツの要領で揚げる。見た目は魚のフライそのもの。熱々のフライにトンカツソースをかけてナイフを入れる。サクッとした触感のあと、スッと切れるが切り口はつぶれてしまう。熱々の一切れを口に運ぶと、ん?何かに似てる。これは、まるで茄子のフライだ。中身がトロトロで、フライの衣だけの食感。キノコの味?よくわからない。ほとんど味がない。ソース味のフライの衣を食べてるようだ。期待したほどのモノじゃなかったが、とりあえず食べられるキノコを見つけたことに満足。たぶん、バターで炒めたりシチューで煮込んだ方が美味しいかも知れない。食後2時間経ったが、タップリ油を吸った衣のせいで胃が重く感じる以外、体調に変化なし。
「旨いべぇ!食べてみれや」と函館タナベの社長のように声をかけても、例によって「まだ、死にたくないもん」と横目で眺める家内。体型が示すとおり、実は大の揚げ物好き。自分のためには豚肉の豚カツを用意してある。外食でもないのに家にいながら夫婦別々のメニューを頂くようになれば、人生もそろそろ秋。実り多い秋となればよいが...