平面バッフルの紆余曲折

 松下製16cmフルレンジ用に製作した平面バッフルだが、コーラル8A-70のグラマラスなマグネットに魅了され、「よっぽどイイ音で鳴るんだべなあ」と、バッフルの穴径を20cm用に拡げて取り付けた。ところが、低域の厚さに比べ高域が伸びずバランスの欠いた音に不満を感じ結局、元の鞘に収まるべく20cm用に開けた穴を薄いサブバッフルで塞ぎ16cmに戻してみた。しかし最初のメリハリある音には程遠く、まるでラジカセ並みの音質。試行錯誤の末、18mm厚の集成材をもう1枚貼り合わせ36mmの厚さに。バッフルの振動が激減しクリアで、バランス良く心地良いサウンドで鳴っている。アルテックグレーに塗装し、今はお気に入りのスピーカー。ここまで長い道のりだったなあ。

▼第一世代:16cmフルレンジ(松下通信工業Hi-eff EAS-16P90SN)
平面バッフルスピーカー(1) 平面バッフルスピーカー(1)

平面バッフルスピーカー(1)

▼第二世代:20cmフルレンジ(コーラル8A-70)
平面バッフルスピーカー(2) 平面バッフルスピーカー(2)

平面バッフルスピーカー(2)

▼第三世代:20cm用の穴を薄いサブバッフル板で塞ぎ16cm用に改造。
平面バッフルスピーカー(3) 平面バッフルスピーカー(3)

平面バッフルスピーカー(3)

▼第四世代:18mm厚の集成材をバッフル板に貼り合わせ最終的に厚さ36mm。16cm用に穴を開け、アルテックグレーに塗装。
平面バッフルスピーカー(4) 平面バッフルスピーカー(4)

平面バッフルスピーカー(3)

関連:平面バッフルスピーカー(1)
関連:平面バッフルスピーカー(2)

平面バッフルスピーカー(2)

コーラル8A-70 バスレフスピーカーボックス開口径20cm

 20cmフルレンジスピーカーをヤフオクで手に入れた。16cmを「平面バッフル」で鳴らし満足しているが、そこは浮気なオーディオマニア。ついつい大柄でマグネットがグラマラスな20cmに色気を感じ手を出してしまった。お気に入りの本命16cmは、このままの状態で置いておきたい。そこで、古いスピーカーボックスに20cm開口バッフルをつけセッティングしてみた。

 アルテックはバックロードホーンで横に開口部があり広い音場を形成していたし、平面バッフルは音場の広がりこそが特筆すべき長所。ところが、バスレフ箱に入れたコーラル8A-70は、スピーカーボックスの存在を感じさせてしまう。フルレンジ一発であるにもかかわらず定位が悪い。

平面バッフルスピーカー自作 やむなく、16cmフルレンジを平面バッフルから外し、20cm用に穴を開け直しセッティング。やっぱり、これだ。一度平面バッフルを聴き慣れてしまった耳には、この音場の広がりと定位感は譲れない。ヴォーカルはセンターに定位するだけでなく奥行を感じるし、16cmに比べコーンが大きい分低音がしっかり再生される。若干高域に不満は残るが、もともと有毛細胞が減少し高域が聴こえにくいことを考えれば良しとしなければ。とはいえ、スピーカーとバッフル板を直付けにしたり、コルク板でガスケットを自作して挟んでみたり、袋ナットや軽トラ荷台用ゴムマットをインシュレーターにしてみたりの試行錯誤のチューニング。袋ナット3点置きでも前に1箇所後ろに2箇所の時と、その逆では音は違って聴こえる。細かな調整に明け暮れる日々だが、目標とするのは結局16cmフルレンジの中高域の音。

 であれば、サブバッフルを付けて16cmに戻せばイイだけの話なのだが、それができない。せっかく縁あって私のところへやって来た浮気相手の20cm、なんとか思い通りにしてみたいと願うのがオトコのロマン。と、もがきながら前に進もうとしている自分を愛おしく想う本末転倒なオーディオマニア。

平面バッフルスピーカー自作

平面バッフルスピーカー自作

袋ナットインシュレーター ゴムマットインシュレーター

関連:平面バッフルスピーカー

youtubeの音に憧れて(2)

 前回、「youtubeの音に憧れて」を書いて以来、どうにもスッキリしない日々を過ごしている。高級オーディオやヴィンテージ・オーディオを紹介するyoutube動画から流れる音が、実は視聴者の閲覧環境に左右されているという事実。例えば、iPhoneにヘッドフォンの場合はまだしも、iphoneのスピーカーだけでは高級な音のイメージは伝わらない。同様にパソコン利用者もヘッドフォンや外部スピーカーを利用してこそ、それなりの音で聴くことができる。このように聴く人の環境によって、いわゆるハイエンド・オーディオの素晴らしい音が再現されるのは難しい。というか、ほぼ不可能に近いというのに同じようなチャンネルが多々溢れている現実にモヤモヤしている。こうなったら事実を立証して、自分なりに納得するしかない。ということで実験開始。

 まず、CDの曲をかけスピーカーの音をビデオ撮り。我が家にはビデオカメラがないので、コンパクトカメラのビデオ機能を代用。手ブレ防止のため脚立の踏み板にカメラを乗せ撮影。これをパソコンで再生、アンプを通して同じスピーカーで聴いてみる。これはヒドイ。CDの実際の音と録画後の音は、まるで違う。いわゆるキンキンシャリシャリした音、全くの別物。コンパクトカメラのビデオ機能では音の再現性が不正確なのだろうと思い、iPhoneのカメラでビデオ撮り。これを再生してみるも似たような音でCDの生音とは程遠い。きっと本格的なビデオカメラでなければ、本来の正確な音が再現できないのだろう。

 そこで、撮影したビデオから映像だけ抽出しCDの音を重ねてファイルを作ってみた。これはイイ。当たり前のことだが、CDの音そのものがスピーカーから流れる。ひょっとしたら、youtubeの高級オーディオ番組などは、こうして作られているのかしらと思えるほどCDとビデオに音の差がない。ただ、これは私の環境で聴く場合の話であって、他ではまた違って聴こえるのだろう。こんなイイ音で鳴ってるよと自慢してみても、インターネットを介すると現実は歪められてしまう。モヤモヤの原因は、そこにあったのだと気づいた。情報が溢れ漂っているインターネットの世界では、歪められた事実を正しく認識する眼や耳など、あらゆるアンテナを持っていなければ簡単に流されてしまう。

 結局、オーディオショップなどで実際の音を聴かなければ、そのもの本来の音を確かめることはできない。実験の結果、当たり前のことに結論が至ったが、そんなこたぁ最初からワカッテいるのだが、人はときどき目移りして迷うイキモノなのです。

youtubeの音に憧れて

 小学生の「将来なりたい職業ランキング」にユーチューバーという職業が入っているという。どうすればユーチューバーになれるのかというと、特に資格や学歴は必要なく、ユーチューブのパートナープログラムに登録するだけでいいらしい。登録手順だが、ユーチューブのホームページにアクセスして「オンライン登録フォームの承認」にある「今すぐ申し込む」をクリック。必要事項を入力し「申込み内容の確認」ボタンをクリック。確認画面が表示され問題がなければ「申込みを送信」をクリック。これで登録が完了する。あとはカメラで自分が好きな動画を撮影してアップすれば誰でもユーチューバーになれる。ということは、私でも簡単になれてしまう。ことは簡単だが、ユーチューバーとして生活できるだけの収入を稼ぐのは大変に違いない。

 「ユーチューバーの業種別年収」によると、
 ゲーム実況ユーチューバーの年収:数万円~5000万円以上
 KIDSユーチューバーの年収:数万円~7000万円以上
 ガジェット・モノ紹介ユーチューバーの年収:数万円~4000万円以上
 面白いことやるユーチューバーの年収:数万円~4000万円以上

 トップクラスと最低ランクでは雲泥の差がある。小学生には「楽して遊びながら動画を撮影して稼いでいる人」というイメージに映るのだろうか。次の世代に責任を持てない私が憂いてもしょうがないが、時代は変わったとタメ息が出るばかり。

 音楽やオーディオに興味があり、ときどきyoutubeを徘徊する。「レコード・カートリッジ聴き比べ」とか「レコード、CD、ハイレゾ音源、音質比較」などオーディオマニアの興味をそそる企画物が多い。時には「ヴィンテージ・スピーカーの音」や「ハイエンド・スピーカーの音」を映像とともに流すチャンネルもある。それを観て「やっぱり、アルニコは違うなあ」とか「えっ、これでフルレンジ1発なの」と驚きを覚えることも。最近はHD音源で実に美しく聴こえる。

 こんなイイ音がするなら、ぜひ、我が家に置いて聴いてみたいものだ。と物欲をくすぐられ、あまりにも高価な値段を悩ましく思いながら憧れている。そんな素晴らしい音に酔いしれヨダレを垂らしながら、チャンネルをサーフィンしていて気づいたことがある。確かに画面の中では高級オーディオのシステムが鳴っているのだが、実際に聴こえているのは私のスピーカーから出ている音。チョット待てよ。これって、どういうことよ。

 私のPC環境は、音声を外部出力からアンプに繋ぎ部屋のスピーカーで聴いている。ALTECのときも今の平面バッフルも同じ。ということは、youtubeの高級オーディオの実際の音は、伝わってないということになる。そのチャンネルの音を私の部屋で再現しようとしたら、そのままそっくりのシステムでyoutubeを閲覧しなければならないということなのか。

 それじゃ今まで、ヨダレを垂らしながら指をくわえて聴いていた憧れの音って何だったんだ。じつは我が家のスピーカーから流れていた音こそ、その正体。それに気づいたら、ヨダレが垂れそうに旨そうな新しいスピーカーなんて欲しくなくなっちゃった。

平面バッフルスピーカー

 昔ながらの水銀体温計、最低でも5分は脇に挟んでジーッとしているのはツライ。電子体温計の場合、ほぼ1分。しかも計測が終わると、ピピッという音で知らせてくれるスグレモノ。

 昨年11月に10日間ほど入院したが、その電子体温計のピピッとなる音が聞こえないことに気づいた。看護師さんに渡された体温計を脇に挟んでいると「はい、鳴りました」と言われるが、自分ではまったく気づかない。朝の検温を自分で記録しようと脇に挟むが、いつまで経ってもピピッといわず壊れてんじゃないのと思うがちゃんと計れている。

聴力検査 テレビの音量が以前より大きくなっているのはわかっていたが、まさか聞こえない音があるなんて思いもしなかった。退院後、体温計を使うこともなく不自由なく過ごしていたが、なんと「ためしてガッテン」で「難聴が認知症の原因」という番組を視てしまった。

 内耳にある蝸牛という器官に音の振動を感じる「有毛細胞」という毛が並んでいるらしい。この細胞は音を電気信号に変えて脳に伝える働きをするが、年齢と共に毛が減少し高齢になると高い音が聞こえづらくなると。

 まさに、これだあ。原因は、毛だったのかあ。

 じゃあ、どうしようもないじゃん。と開き直っていたが、耳鼻科で耳掃除をしてもらったら聞こえるようになるかもと家内が勧めるので、淡い期待を胸に受診。耳の中はキレイですと。ヘッドフォンをかけて聴力検査。低域に異常なし、中域がやや聞こえづらく高域はかなり聞こえてないという結果。「毛ですか?」と聞くと「毛です」。「対策は?」と聞くと「ありません」。低域が正常なので補聴器を使うと、その部分だけ大きくなって余計聞こえにくくなるらしい。

アルテック 淡い期待を裏切られ、結構ショック。何よりもイイ音で聴きたいと長年連れ添ってきたオーディオ機器。ジャズでシンバルの響きを如何に生音に近づけるか、自然で伸びやかなベースの響き、つばきが飛んでくるようなサックスの音色の臨場感etc.いろいろと無理難題をシステムに求めてきたが、期待に応えてくれても自分が聴こえてないんじゃ意味がない。実に寂しく悲しい。ということは必要ないじゃん。結局、ヤケになってMcIntoshのパワーアンプとコントロールアンプ、Altecのスピーカーを手放すことに。

 手元に残ったのは、レコードとCD、レコードプレーヤー、CDプレーヤー、サブ機のAccuphaseのプリメイン。スピーカーがないので、しばらく音のない生活が続いていたが、今は倉庫となっている1階の旧診療室、待合室、院長室、医局員室それぞれの天井にBGM用スピーカーが埋めてあることに気づいた。

 開業以来30数年間、休診日以外毎日鳴っていたスピーカーだが、移転後8年ほどは全く音出しなし。脚立に登り天井に固定されたナショナルのマークがついたカバーを外すと、薄いバッフルに固定されたスピーカーが出てきた。スピーカー本体はサランネットを兼ねた薄く黒い紙で包まれているため埃をかぶることもなく意外とキレイ。松下製の六半いわゆる16cmのフルレンジ、Hi-eff EAS-16P90SNと書いてある。マグネットが小さいのでオーディオ用というより、壁や天井に埋めて使用する館内放送用のものらしい。

 1階の天井から回収したのは全部で5個。とりあえず音が出りゃイイ訳で一番簡単に平面バッフルに組み込むことに。平面バッフルというのは、穴を開けた板にスピーカーを取り付けただけのもの。板のサイズは大きければ大きいほどよく、いろいろと面倒な計算式があるのだが、いっさい無視。今や木工所と化した技工室にストックしてある端材を加工して自立できるように工作。チャチャチャと半日仕事で完成。

平面バッフルスピーカー自作

 40年前の放送用スピーカー、小ぶりの板の平面バッフル、期待するほうが無理。わかっていても一発めの音出しは常にワクワク。

 ベニー・ゴルソンのスターダストというアルバム。ウーン、ぜーんぜんイイわ。フレディ・ハバードのフューゲルホーンが前に躍り出てくる。たしかにロン・カーターのベースに迫力はないが、なんたって16cm。もともと高域が聴こえにくいせいか、逆に全体としてはバランスが取れている。館内放送用ということでレンジが狭くアナウンスやボーカルの帯域が明瞭に聴こえるよう特化しているのかも。また平面バッフルでボックスがないため、今風のスピーカーのように低音に負荷をかけて強調せず素直で自然な響きが広がる。これはこれでアリ。結構、音楽が楽しめるスピーカー。40年経ってもこの音質を維持できる松下通信工業、恐るべし。

平面バッフルスピーカー自作

 レンガで転倒防止、ターミナルなしのケーブル直付け。洗濯バサミでケーブル固定。

平面バッフルスピーカー自作

 耳のイイ若い人が聴くには物足りないかもしれないが、歳で毛が薄くなった耳にはちょうどイイ。音楽が心地イイ。レコードやCDまで手放さなくてヨカッタなあ。

関連:平面バッフルスピーカー(2)
関連:歳をとるのは寂しい

FMの垂直偏波と水平偏波

 屋外アンテナの設置により、画期的に受信状態が改善された我が家のFMラジオだが、最初の調整時に聴いた音が最高にクリアで分厚い音だったような気がする。その後、民放局の受信状態を改善しようとアンテナを水平から垂直に変えたり、場所を移動したりするうちに音が薄っぺらになってきた。設置してすぐは、高音が伸びやかで低音は重厚、一音ずつ粒だちが良く無音の静けさが素晴らしくCD以上のレベルに感じたのだが。

 この地域のFMが垂直偏波だと知らずに水平偏波用にアンテナを設置したのだが、結果的にそれが最高にイイ音だったことになる。正しい知識のないままインターネットの情報に流され、余計なことをやっちまったせいに違いない。「垂直偏波の電波を水平偏波のアンテナで受信すると、垂直偏波のアンテナで受信する場合に比べて20dB(100倍)以上減衰すると言われています。でも実際には伝搬経路によって偏波面が回転したり乱れたりすることから、それほど激しい減衰はありません。」という記事を目にしたことに始まる。こんな風に書かれると、アンテナを垂直にしたら「もっと音が良くなるんじゃないか」と思わない方がどうかしている。素直な私は、少しでも音が良くなるのなら多少の手間は惜しまずと、一度組み立てたアンテナをバラし垂直偏波用に立て直した。結果、良くなるどころか音に不満を感じるようになってしまった。

FMラジオ水平偏波用アンテナに またまたインターネットで「垂直偏波の電波は、水平に立てたアンテナでは全然ダメか?の問題ですが、もちろん受信できます。室内アンテナなどよりはるかに良好なはずです。垂直は垂直で受けた方がより良いというだけの話です」という記事を見つけた。

 要は「回りにまったく何にもない空間では、理論的に垂直偏波は水平偏波用のアンテナでは受信できないが、街中などいろいろ反射する空間では関係ない」ということらしい。なあーんだ、最初のままでヨカッタじゃん!ということで、またまたバラして再度立て直し。結局、音質も最初の状態に復帰。おかげで今、最高の音質で「由紀さおりが唄うスタンダードナンバー」を聴きながらブログを書いている。強電波地域に住む都会人には理解できないかもしれないが、電波の谷間の住人は少しでもイイ電波を捕らえて離さないために血のにじむような努力?を惜しまず試行錯誤を楽しんでいる。

電波の谷間のFMラジオ

 私の田舎は、周囲を山で囲まれ盆地になっている。いわゆる電波の谷間だが、「au」も「docomo」も繋がるし地デジも映る。問題はラジオ、マトモに聴けるのはAM・FMともにNHKのみ。特に鉄筋コンクリートの我が家では余計に聴きづらい。それでもオーディオラックには、昔、札幌で使っていたTrioのチューナーが収まっている。T型フィーダーという室内の壁に貼るアンテナで雑音だらけのNHKFMを聴いている。いつか、屋上にFMアンテナを立て「AIR-G'」や「NORTH WAVE」が聴こえるようにしたいなあと思っていた。旨くいけば10年ほど前、私がDJをやっていた隣の隣の街のコミニュティFMも聴こえるかもしれない。と、期待しつつ冬の間に材料を仕入れていた。

 屋上の雪もすっかり融け、絶好のアンテナ工事日和。
八木アンテナ部材 八木アンテナ部材

 魚の骨みたいな形の八木アンテナ。組み立ててみると、意外に大きく長さは3メートルもある。
FMアンテナ工事 FMアンテナ工事

 設置のあとの調整だが、横の長い棒を中継局の方向へ向ける。この状態でラジオを聴いてみる。今までと違って、全く雑音無くクリアに聞こえる。ただ、これはNHKFMだけ。他のFM局は、なんとか電波を拾うもののステレオにはならない。雑音も多く、聴きたくなるような状態ではない。きっと調整が悪いせいかしらと調整方法をネットで検索していると、重大な事実に気づいた。

FMアンテナ 今回、私が買った日本アンテナAF-7というのは、水平偏波用のアンテナとして売られていた。初めて知ったが、FM電波には水平偏波と垂直偏波という2種類があるらしい。水平偏波は、水泳のバタフライのような動きで水平に波打って進む電波。この電波を受信するアンテナは、よく見かける屋根の上のテレビアンテナのように地面と水平にアンテナ棒が並んでいる。対して垂直偏波は、へびのように左右に蛇行しながら進む電波。これを受信するアンテナは、地面と垂直にアンテナの棒が並んでいなければならないという。この水平偏波と垂直偏波、それぞれ送信中継局によって異なり一般的には水平偏波が多いらしい。私の田舎には四つの中継局がある。そのうちの一つ、たまたま私のエリアの中継局だけが、テレビ、FMいずれも垂直偏波。これは北海道内の中継局の中でもかなり珍しいケースであると書いてある。

トリオFMチューナーKT1000 なあーんだ、違うじゃん。アンテナを選ぶときから間違ってたじゃん。よもや、アンテナ買い換えかと思ったが、要は横向きのアンテナを縦向きにすればイイと云うことらしく、それ専用の金具は付いてないので、あり合わせの材料で修理して付け替え。アンテナ設置が終わり最終調整。NHKFMはクリアなステレオだが、他の放送局は「聴こえるけど」というレベルでFM本来の音ではない。それでも室内アンテナのときは、全く聴こえなかったのだからヨシとしよう。

 地形的に完全盆地のこの辺りは結局、電波の谷間にあって「ラジオ放送」は趣味の域を出ずユニバーサルサービスではない。需要の多い「テレビ」や「通信」だけがユニバーサルサービスであるのは、地理的な谷間のせいだけじゃなく政治力の谷間にあるような気がしてきた。

想い出のラヂオ番組

 「ラヂオのこと」でも書いたが、子供の頃の娯楽といえばラヂオ。北海道に初めてFMの本放送が流れたのは1969年。すでに高校を卒業して浪人中のこと。「ほとんどモノラル、ときどきステレオ」というNHKのFM放送だったらしい。中学の時、父親に買ってもらったスタンダードのAM/SW2バンド7石トランジスタラヂオではFMが受信できなかった。翌年も受験に失敗し上京。アメリカの最新ヒットチャートをどこよりも早く放送するということもあってFENオンリー。本格的にFM放送の虜になるのは、名古屋の大学で先輩が「捨てようとしていたレシーバー」を手に入れてからのこと。レシーバーとは、チューナー付きアンプのことでレコードプレーヤーやカセットデッキが接続できる。貧乏学生のオーディオ道楽は、スピーカーユニットと板を買ってきて雑誌に載っている長岡鉄男設計の自作スピーカーボックスを作ること。塗装もせず見た目はリンゴの木箱のように質素だが、ダイヤトーンの六半フルレンジ1本のバスレフから聴こえるFM愛知、これがまたイイ音で鳴るんだよなあ。

w39.jpg 捨てられる運命にあった「Trio W-39」というレシーバーは、真空管式。スイッチを入れても暖まるまで、しばらく音が出ない。なにより重かった記憶がある。20kg近くあったかもしれない。あの頃でも放送は終わっていたはずだが、NHK第1放送と第2放送を左右別々のチャンネルで受信してステレオにするという「立体放送」が再現できるというスグレモノ。だから、AMチューナーが2個ついている。部屋の照明を落とすと真空管の温かい光が漏れてイイ感じの雰囲気だが、しばらくすると直接手で触れられないほど天板が熱くなる。冬は暖房代わりになりラッキーだが、ただでさえ暑い名古屋の夏には耐えられない。もちろん、クーラーも扇風機もない狭い部屋。大音量が外に漏れないように窓を閉め、汗をダラダラ流しながら由井正一のアスペクト・イン・ジャズやナベサダのマイディア・ライフを聴いていた。

 FM愛知は、日本で最初の民放FM商業放送局。3番目に開業したFM東京(TOKYO FM)と、ほぼ同じ放送内容。午前零時のジェットストリームの前は、23時45分から「あいつ」が流れる。トヨタ自動車提供。日下武史の個性的な声でハードボイルドなストーリーが朗読される。都会の夜の無機質な情景を連想させるBGM、コツコツ響く靴音やBARの扉をあける効果音。なんといっても劇中1曲だけの選曲がブラックでファンクでカッコイイ。外人部隊出身の凄腕な「あいつ」が敵と遭遇し、時にはピストルの効果音が私の部屋を揺るがす。大人の雰囲気満載で私の憧れるすべてが凝縮された番組だった。イタズラな神様に、好きな番組一つだけ聴かせてあげると囁かれたら、間違いなく日下武史の「あいつ」をリクエストする。

 その番組のオープニング曲、イギリス映画「GET CARTER(狙撃者)」のメインテーマ。ハープシコードとベースのコラボで始まるクールな曲。今でも、この曲を聴くと日下武史の顔と深夜の自室に熱気を孕んだレシーバーと番組の黒い雰囲気、若さだけが有り余っていた甘酸っぱい想い出の日々が蘇る。

Get Carter / Roy Budd


 あの時代、深夜放送・深夜営業という言葉が当たり前に通用していた。いつの頃からか「深夜」という感覚のない世の中になってしまった。24時間営業という便利なものが巷に溢れているせいに違いない。

歳をとるのは寂しい

 今日の昼食時、なにげにテレビを見ていたら各年代によって聴こえる音の周波数が違うという内容の番組をやっていた。いわゆる歳をとると耳が悪くなってくるというやつだ。50代までの人なら聴こえるはずという音が流れたが、まったく聴こえない。40代・30代・20代とそれぞれに聴こえるべき音を流すのだが、50代の可聴域が聴こえないのだから、その他すべて聴こえるわけがない。傍にいた30代の息子には聴こえるらしい。今まで自覚したことが無かったが、これが現実と知って少しショックを覚えた。

 もともと個人差はあるが、ヒトは通常20Hz~15,000Hzないしは20,000Hz程度を音として感じる。この周波数を超えたものが超音波であり、下の限界付近が低周波音。20代前後をピークにして可聴帯域が低下し、ゆくゆくは老人性難聴になるらしい。

 一昔前、オーディオに凝っていた時期がある。20Hz~20,000Hzまで聴こえる装置だとか、実際には聴こえない高域の音を出すことで音楽の雰囲気を醸しだすとか、少しでもイイ音で聴きたいと欲望は膨らむばかり。上のまたその上を目指していた。オーディオ装置は上を見るとキリがない。ハイエンドを追求すると何千万もかかってしまう。もちろん、そんなもの買えるわけもなく自分なりに妥協した結果、現在のシステムで音楽を楽しんでいる。それでも普及品とは比べものにならない値札の物を大枚払って手に入れた。

 結局、この歳になって耳が悪くなったのだから、いくら高域が出るとはいえ無用の長物になってしまった。でもなあ、長年連れ添った愛機だからなあ、ホコリがたまってガリが出るけど死ぬまで私と一緒だ。

 

 イイぞおー!マッキントッシュのアンプにアルテックのスピーカー。中域が厚くてJAZZを聴くには最高だあ!と言ってはみても、もともと私に聴こえる可聴帯域は中域しか無いんだもんね。やはり、歳をとるって寂しいなあ・・・

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