タマゴタケ

 今年はタマゴタケの当り年らしく、ひと廻り散策すると毎回決まって5〜6本は持ち帰る。毎日毎日、バター炒めや卵とじや味噌汁で頂いてるが、こうも続くとそろそろ飽きてきた。誰かに「これ、ウメェぞー」とプレゼントすればいいのだが、キノコ採りのエチケットとして「人にあげない」というのが大原則。どこに過ちが潜んでいるかわからない。万が一があった場合、善意がアダとなることも。あくまで自己責任。

 「飽きたのなら、採らずに帰ってくればいいのに」と云われるが、それができないのがキノコ採りのサガ。キノコ狩りはタイミング。日ごとに成長するので小さな個体の場合、今日より明日の方が大きく育ち量も多く収穫できる。そんなこたぁ、わかってるんだが人生、明日のことなど分からないので「採れるうちに採る」。これが座右の銘。いつ採るの?今でしょ!見つけたが最後、放っておくなんてモッタイナイ。

 結局、「私をおウチに連れてって」というタマゴタケの思惑通り、5本をお持ち帰り。そのうちの1本、あまりにも愛らしく食べちゃうにはもったいないので鉢に植えた。観賞用という目的もあるが、本音でいえば、このまま小さな状態で食べるより、もっと大きく育ててから頂きたいという思惑も...

 Wikipediaによると「養殖」とは、生物を食品や工業製品として利用することを目的として人工的に育てること。鑑賞用や愛玩目的で育てるのは養殖といわないらしい。私の場合、大きく育つところを鑑賞し、結果、美味しく頂くことを目的としているので立派な養殖と言い切ってもいいのかな?

タマゴタケの思惑

 ややこしい話だが、シロハツは食べられるがクロハツには毒がある。親戚のシロハツモドキには毒があり、クロハツモドキには毒がない。猛毒のニセクロハツもある。

 クロハツモドキの見分け方は、カサ裏のヒダが密であること。クロハツ、ニセクロハツのヒダは粗い。ニセクロハツは傷つくと白から赤に変色するが、クロハツとクロハツモドキは赤く変ったあと黒くなる。モドキのほうが黒変のスピードが速い。よほどグッドタイミングでクロハツモドキを見つけないと、たいていの場合、虫や枯れ葉に傷つけられて黒くなっていることが多い。別に無理して食べなくてもいいが、量が多いのでなんとなくモッタイナイ気がする。

クロハツモドキ クロハツモドキ

クロハツモドキ クロハツモドキ

 テングタケの親子とミヤマタマゴタケの兄弟。微笑ましい。

テングタケの親子 ミヤマタマゴタケの兄弟

タマゴタケ

タマゴタケ 3日続けてタマゴタケの話題になるが、なんたって今が旬のキノコ。その派手な装いのため、遠くからでも見つけやすい。確かに美しく、艶やかな自慢の姿を見てほしい気持ちもわからないわけではないが、見つかれば摘まれてしまう運命。もっと密やかにしていれば、見つかることもなく命を永らえることができるのにと可哀想になってくる。

 河島英五ではないけれど「目立たぬように、はしゃがぬように♪」と、時代おくれの男のように生きていたいと思う私だが、タマゴタケほど艶やかで美しく可愛らしく人気アイドルのような存在では難しいことなのかもしれない。

 ただ、竹内久美子のセルフィッシュジーンに感化されている私が思うに、私に摘まれたタマゴタケはカゴの中で揺られながら移動する間に、その脆さゆえにカサが崩れアチコチに胞子を撒き散らし広範囲に子孫を増やす作戦をとっているのではないだろうか。だとすれば、わざと目立つ姿でアピールし「私をおウチに連れてって」と誘っているに違いない。うーん、恐るべしシタタカなタマゴタケ。と勝手に解釈しているのだが。

 今夜のメニューは、タマゴタケの卵とじ。この味は、タマゴタケでなければ出せないだろうなあ。

タマゴタケ タマゴタケの卵とじ

 また、アレを見つけてしまった。おおよその見当はつくが「こっち」なのか「あっち」なのか。あと何日かで判明する。

アミガサタケ幼菌 アミガサタケ幼菌

タマゴタケいろいろ

タマゴタケ タマゴタケには、いくつかの種類がある。幼菌時代、鮮やかな朱色の本家本元タマゴタケ、黄色のキタマゴタケ、ゆでたまごのようなシロタマゴタケ、燻製たまごのようなミヤマタマゴタケ。他にもタマゴタケモドキ、タマゴテングタケ、タマゴテングタケモドキ、ハマクサギタマゴタケ、シロタマゴテングタケ、シロタマゴテングタケモドキ、ミヤマタマゴテングタケなど種類は豊富。

 これらは、スーパーマリオブラザーズのベニテングダケ同様、テングタケの仲間であり、ほとんどが毒キノコ。唯一食べられるのがタマゴタケ。美味であり、ヨーロッパでは高級食材として扱われているという。それ以外は毒を持つが、特にタマゴテングタケ、シロタマゴテングタケはドクツルタケとともに「猛毒キノコ御三家」といわれ、キノコで死ぬ人の9割がこれらが原因。食べてから発症するまで24時間もかかるため、ほとんどの毒が体内に取り込まれてしまい1本でも致死量になる。解毒剤はない。最初に激しい嘔吐、下痢、腹痛、痙攣が起こり、一時的に回復するが、その後数日で内臓が破壊され5割の人が死亡するという。助かっても後遺症が残るらしい。

 恐るべし毒キノコ。そんな怖いキノコは珍しくない。散策していると、その辺に普通に生えている。写真は、ミヤマタマゴタケ。まるで燻製たまご。成長すると、かなり大きくなり遠くからでも目立つ凛々しい姿になる。

ミヤマタマゴタケ

ミヤマタマゴタケ ミヤマタマゴタケ

 紅葉した落ち葉や枯れ葉が少ないこの季節、土色や緑色の景色の中で派手なオレンジ色のカサはよく目立つ。本家本元タマゴタケは、今一番の目立ちたがりや。今日も何本かゲットしたが、タイミングがずれると朽ちてしまう。まさに一期一会の間柄。そんな貴重な縁で結ばれた愛しいキノコを、頂きものの最高級「カルピスバター」で炒めた。いつものバター炒めより数段旨かったなあ。

タマゴタケ タマゴタケバター炒め

 まるで卵の殻そのもの。成長したタマゴタケを根元から折ったところ。

タマゴタケ

タマゴタケ こんなに派手な色彩のキノコは、ケバいネエちゃん同様毒がありそう?だが、見た目で判断してはいけない。かなり美味なスグレた食菌。

 テングタケ属なので外見は、毒キノコのベニテングタケに似ているが、特徴を知ってしまえば間違えることはない。カサの色は赤から赤橙色。形は最初は卵型でやがて饅頭型になり、最終的には中央に出っ張りのある平らな形に変形し黄色味を帯びていく。縁にはハッキリ条線が現れくる。裏ヒダは黄色で、柄は黄色味をおびマダラ模様がある。なによりも根元には名前の由来のタマゴ型のツボがある。

 炙って塩を振ってもバターで炒めても汁物にしても旨い。味噌汁にするとカボチャの味噌汁のように黄色くなり、甘く濃厚な旨味を楽しめる。この黄色い色素こそがタマゴタケの旨味成分なので、採ったあと水洗いせず土やホコリを削りとったり払うだけにして調理する。ご飯に炊き込むと、見た目サフランライスのような「タマゴタケご飯」だが、まるで「タマゴカケご飯」の色になる。想い出すだけでヨダレが溢れてくる。

 カゴに入れて歩いているだけでカサが壊れるほど脆いため、一般には流通できないらしい。

タマゴタケ タマゴタケ

オニイグチ このキノコに出会うといつも仮面ライダーの宿敵、悪役ショッカーをイメージしてしまうのは何故だろう。トゲトゲに覆われたオゾましい姿、汚らしいモノトーンの地味さ。一見毒キノコのように思えるが、ラクヨウやヤマドリタケと同じイグチの仲間。食べられるキノコだそうだが、まったく食欲をそそられない。モノの本によると、見た目と違って結構美味らしい。

 この写真は、オニイグチかオニイグチモドキのどちらかだが、見た目が同じなので区別がつかない。傘には黒い固いトゲ状のササクレがあり、軸はしっかりしている。傘裏の管孔は幼菌では白く、成長すると黒くなり傷つけると赤変し黒くなる。痛みが早いので、採ったらすぐに調理しなければならないとのこと。虫だしのため塩水に浸けると墨を流したように真っ黒になると聞くと、イカ墨料理のような旨味成分を連想させる。食べてみたい気がするが、やはりグロテスクな外見に気後れして未だに試していない。

オニイグチ オニイグチ

オオカミよ再び

 何日か続いた雨が上がり、気温も下がり絶好のキノコ狩り日和。今年の山荘はアカヤマドリタケの当り年らしくアチコチに顔を出している。旨いキノコなので虫も好んで喰う。大きな傘は割ると真っ白でふわふわのパンのようだが、大きなものにはたいてい虫がいる。先日のポルチーニは陽に干して乾燥してあるので、アカヤマドリは無視。

 キノコ狩りの魅力の一つは、見つける楽しさ。目を凝らしながら散策していると、いままさに殻を破って顔を出そうとしているタマゴタケの幼菌を見つけた。あまりにも可愛らしく食べるにはまだ早いので写真撮影のみ。その側に見つけたのは、ゴルフボールのように小さく真っ白なテングタケの幼菌。もちろん食べられない毒キノコなので写真撮影のみ。

タマゴタケ幼菌 テングタケ幼菌

 今年2度めの遭遇、ハナビラタケ。このキノコは、白くて大きいため遠くからでもよく目立つ。まるでウサギがうずくまっているように見える。美味もさることながら、免疫力を高める天然の薬効キノコ。見つけるタイミングによって、朽ちてボロボロ状態だったり出始めで小さ過ぎたり収穫には運が作用する。

ハナビラタケ

 枝豆の実が充実する前に何者かに葉を喰われてしまった。ミカドフキバッタやコガネムシの被害にしては極端すぎる。鹿かキタキツネかアライグマによるものと思うが、今ひとつ足跡がハッキリしない。ジャガイモ畑と違ってキチッと防獣ネットで囲ったはずだが、キツネやアライグマならネットの下を潜って侵入できるし、鹿であれば、上を飛び越えることも可能。

ミカドフキバッタ コガネムシ

枝豆獣害 やはり、山の中での畑作はナメたら泣きをみる。とはいえ、これ以上の獣害対策といえば電気柵や完全ハウス栽培。ただ、キツネやアライグマは電気柵の下を通り抜けるらしく、ビニールハウスを建設するには営農を目的としない私にはコストパフォーマンスが悪すぎる。昔、同じ場所にブドウ畑が広がっていた頃には、電気柵など見たこともなかった。獣害の心配もなく人は人、獣は獣という棲み分けがなされノンビリした世の中だったが、いつの頃からか人里にかぎらず山の中まで住みにくくなってしまったようだ。

 それでも何年か前まで、ジャガイモだけは鹿の害を受けなかったこともあり、防獣ネット外で育てたのだが、結果的に、ほとんどの葉を喰われ茎だけという悲惨な状態。この状況から察するに、鹿ではなく最近全道に勢いを増しているアライグマの可能性が高い。あらいぐまラスカルの人気でペットとして飼われ、逃げたのか捨てられたのか野生化し自然繁殖しているらしい。一時期、このあたりでも野生化したミンクが増え、山荘の池に棲む鯉が全滅する被害にあったことがある。最近、見なくなったのは、何らかの天敵に駆除されたのかもしれない。いずれアライグマも同じ運命をたどるのだろうか。ラジオで聴いたが、増えすぎた鹿対策やヒグマ対策には、オオカミを山に放すことが一番の解決法らしい。ただ、北海道では絶滅してしまったのでヨーロッパから連れてくるという具体的内容。いつか実現して、獣害から開放されることを願っている。

ポルチーニ茸の仲間

アカヤマドリタケ アカヤマドリタケ。直径30センチ、厚み10センチの巨大キノコ。

 以前記事にした「カラカサタケ」も大きかったが分厚さでは、こちらの方が断然スゴイ。傘の表面はヒビ割れ、見た目はグロテスク。比較のために横に置いた腕時計と比べると、その巨大さは一目瞭然。ただし大きくなりすぎると虫食いが多いので、食用にするには傘の開かない固くしまったものを採る。幼菌は半球形のまんじゅう形で表面がビロード状、濃いオレンジ色でシワシワ。のちにほぼ平らに開いてヒビ割れる。この特徴はアカヤマドリタケだけなので、他のキノコと間違えることはない。

 アカヤマドリという名前だが、イグチ属のキノコで、ヤマドリタケ属のヤマドリタケやヤマドリタケモドキとは種類が違う。ヤマドリタケやヤマドリタケモドキは、イタリアではポルチーニ、フランスではセップと呼ばれるが、アカヤマドリはヨーロッパには生えていないらしい。和食にもイタリアンにも合う。天ぷらや茹でてポン酢でも旨いがパスタにも合う。一番のお勧めは分厚くスライスしてバター焼き。

アカヤマドリタケ アカヤマドリタケ

ヤマドリタケモドキ、アカヤマドリタケ 今日の収穫は、アカヤマドリタケとヤマドリタケモドキ。これでも小ぶりのアカヤマドリだが、大きさをわかりやすくするため、ハガキと一緒に写している。大きな傘の直径は15センチくらい。黒っぽいのはヤマドリタケモドキ。ヤマドリタケは針葉樹林、ヤマドリタケモドキは広葉樹林に生えるらしいが、山荘は混合林なので、どこにでも出てくる。外見がよく似ているドクヤマドリタケとの違いは、柄にある網状の模様。柄の途中まで網目があるのはヤマドリタケ。全体に網目があるのがヤマドリタケモドキ。ドクヤマドリタケには網目がないので区別できる。

 以前、「野花南産ポルチーニの食レポ」を書いたが、とにかく旨い。ヨーロッパのマツタケと呼ばれ、まさに「キノコの王様」「香りの女王様」。あまりに美味しくて2人前を平らげてしまった私の身に起こった出来事は「こちら」

そろそろ収穫の秋

 暑い日が続いている。岐阜県多治見市では40度近くにもなるらしい。それに比べれば、ここ北海道は大したことはないとはいえ笹を刈ったり草を刈ったりすると汗が吹き出す。アブやハチ対策に長袖オールインワンの作業衣で完全防備の私が山仕事を始めるのは、日中で一番暑い昼過ぎからなので余計に暑い。とはいえ、暑さ寒さも彼岸までの例えの通り、あと2週間もしてお盆が過ぎると涼しくなる。

 今年の夏グミは、開花時期が寒かったせいか雨が多かったのか不作の年。恒例のグミジャム・グミ酒の仕込みができなかった。今、採れるのはブルーベリー。熟すと、ほとんど酸味のない甘い実になり私にとっては少々物足りない。

ブルーベリー ブルーベリー

 今年初めてのキノコの収穫、ハナビラタケ。この何日かの雨のせいか、今年は少々早め。「幻のキノコ・次世代のキノコ・免疫キノコの王者」。β1-3Dグルカンが多く含まれ、末期ガン患者にも効くらしい。今のところ、私は大丈夫なので大切な人にあげようと冷凍保存した。

ハナビラタケ

 そして、ジャガイモ。まだ、実のなりは小さいが茎が倒れ始めたので何箇所か試しに掘ってみた。大きなものは茹でて食べるが、親指の先ほどの小粒な新ジャがをそのままじっくり揚げてフライドポテトにする。ほとんど商品では手に入らない大きさなので、まさに収穫した時だけ頂く贅沢な山の味。

メークイン新ジャガ

ラクヨウハンター

抜歯塚

ラクヨウ 毎年恒例の「抜歯塚供養」、秋のお彼岸には欠かすことなく48年間続いている。山荘に広大なブドウ畑があった頃、広場に敷物を敷きつめ隣近所や知り合いが集まりジンギスカン鍋を囲んで大宴会とブドウ狩りという秋の行楽を満喫する行事だった。お彼岸の中日なので、お寺の住職さんには最高に忙しい日だったはずだが、お参りのあとも宴会に参加して酒を飲んでる姿に「大丈夫なのかな?」と眺めていた記憶がある。

 今では、弟の家族と息子夫婦と私たちだけで供養を終えたあとにラクヨウを探すのがメインになっている。いつもそうだが、この歯塚供養の日ではラクヨウの時期としては少し早い。1~2週間あとの9月末から10月初めが最盛期。今年も、そんな季節を迎え、お散歩感覚でラクヨウが見つかる。特に今年は、笹を刈って見晴らしが良くなったので1本見つけると、簡単に周りに何本も見つけることができる。たった5分でザルの底にイッパイになることも。

 笹が生い茂っていると小さなうちに見つけるのが難しく、ある程度、傘が開かないと目にとまらない。結果的に虫食いの確率も高くなり、捨てる部分も多かった。今年は、あえて出始めの小さなモノだけをターゲットに目をこらしている。そのせいか、いつも以上に今年のラクヨウが旨く感じられる。

ラクヨウ

目で楽しむキノコ

テングタケ

 イボテングタケ。イボテン酸という旨味成分が豊富、中毒覚悟で食べると旨いらしい。長野県上田市あたりでは、真っ赤でド派手なキャラのベニテングタケを茹でて塩漬けで長期保存したあとに塩を抜いてて食べるという。きっと旨いのだろうが、イボテングタケの旨味成分の方がベニテングタケより10倍も多いらしい。それだけにヤバイのか、ベニテングタケは食べてもイボテングタケを食べたという話は聞こえてこない。毒があろうがなかろうが、目で楽しむキノコとしては5本の指に入る。ドコモダケやスーパーマリオのキャラを連想させる。夏から秋にかけて、そこら中に生えている。ハエが舐めると動けなくなるので別名ハエトリという。ハエも旨いものには目がないのかもしれない。

カワラタケ

 カワラタケ。小型の傘が重なって生える様子が屋根瓦に似ていることから「瓦茸」と呼ばれる。肉質が硬いので食べられないが、乾燥して煎じ「キノコ茶」として飲まれる。酒に漬けると「キノコ酒」になる。健康食品として利用されるのは、副作用のない抗がん剤として有名な「クレスチン」の成分がカワラタケから抽出されるから。クレスチンの機能性成分は「β-グルカン」という多糖類。あのハナビラタケに多く含まれるものと同じ。

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