吹雪とは違う「冬の嵐」が吹き荒れている。ここのところ、連盟役員を辞めるまで気分がすっきりしなかったが、日歯連盟理事・道歯連盟理事長の辞職が決まり、安堵の気持ちで連休を迎えた。

 「こんな風の強い日に出かけたら、ナニが飛んでくるかわからないよ」という制止の言葉を背に受けて、娘二人と野花南へ出かけた。案の定、ひどい風で歩くのもままならず。なんとか着いたが、風で倒れたカラ松が道路をふさぎ通行止め状態。

 

 とりあえず樹を切り、脇に寄せて通れるようにしたが、一人でヤルには重労働。吹き荒れる風と寒さの中で汗だくになってしまった。よほど風が強かったせいか、他にも何本か倒れているが道をふさいではいないので、雪が融けてから片付けることに。カラ松は枝が広がることはなく、枝振りと同じほどにしか根が張らず、樹高の割には根を張る範囲が狭く、どうしても風に弱い。

 ぬかるむ雪に埋まりながら、春を探して歩いてみた。今年一番の春は、サラサモクレンとハクモクレンの花芽。こんな寒い中でも命をつなぐために一生懸命生きている。フワフワの毛に覆われて防寒対策はバッチリだ。ネコヤナギの花穂に似た部分が割れ、中から上品な香りのピンクの花が顔を出すのがサラサモクレン。ビックリするほど大きな白い花が咲くのがハクモクレン。あと半月もするとフキノトウが出はじめ「油味噌炒め」のほろ苦さを味わえる季節になる。厳しい冬が過ぎ、着実に春の足音が近づいている。

 

春まだ遠し野花南山荘

 娘達をオモイッキリ走らせようと、まだ雪深い野花南へ連れて行った。やはり途中からクルマが入れず、山荘の入り口まで1キロほど歩く。このところ暖かい日や寒い日を繰り返しているので雪が固まり、それほど沈まずに歩ける。

 

 まわりを見渡しても、まったく春の気配は感じられず完全に冬景色。それでもあと一月もすると福寿草やクロッカスが芽吹きはじめ、春は急速に訪れる。

 

 ひとしきり走り回って帰ってきたが、よほど疲れたのか、ララはグロッキー。お股を拡げてグッスリ夢の中。

 奴らが眠っている間に、我が家の定番「ホットケーキ粉と豆腐のコーン蒸しパン」を作る。牛乳パックと電子レンジで作るお手軽メニュー。10分もあれば出来上がる。冷める頃には娘達も目を覚まし、私たちのおやつタイム。日曜の昼下がりはノンビリムード・・・

 

真冬の野花南山荘

 野花南山荘は、冬期間閉鎖である。というのも山奥まで除雪車が入らないからだ。途中の農道まではクルマで行けるが、その先は雪をかいて歩かなければならない。

 それでも久々の休日に娘達を思いっきり走らせようと連れて行ったが、案の定、雪が深く途中でクルマを置いて1キロほど歩いた。雪面に残るのはキツネの足跡だけ。誰かがスキーで歩いた跡も残っていた。自然の中でのクロスカントリーには最適の場所だ。

 

 山荘の入り口までなんとか歩いたが、その先を行くのは自殺行為。

 

 遭難するのはイヤなので、秋に手入れをした林からの進入を試みたが、膝まで埋まる雪の深さに退散。体重20キロほどの娘達には、雪の多さは関係ないらしい。アチコチ元気に走り回リ雪まみれになって帰ってきた。

 

怒れる森の精

 チェンソーで伐採するときの必須アイテムは、厚手の手袋・ゴーグル・帽子・マスク。これで排気ガスや怪我から我が身を護るのだが、雨が降っていると、マスクのせいでゴーグルが曇り視界が悪くなる。やむなくゴーグルを外して作業したのがマズかった。

 飛び散る削りクズが目に入り汚い手で擦ってしまった。そのあと切った木を押し倒そうとしたとき、枝がはねて目ん玉を直撃。痛いのなんの一瞬クラクラしてウズクマルほど。しばらく難なく過ぎたが、夜になって痛みだし一晩中涙が止まらず苦しみのなか一睡も出来ずに朝を迎えた。考えてみたら木クズが入った目と枝が当たった目が同じだったからイイようなもので、これが別々なら両目とも痛くなっていたところ。

 朝一で眼科に行ったが、削りクズはすでになく上マブタの裏側に炎症があり水晶体に傷が出来ているとのこと。クスリを差してくれたが痛みは治まらず。両目をつむっていると楽なのだが、無事な目でモノを見ようと少しでも動かすと患部に激痛が走る。結局仕事にもならず、一日中両目を閉じて過ごしていた。二日経って、やっと少し楽になったが今夜の札幌での会議も眼帯をしながら片目で運転するのは危険と判断し家内に送り迎えを頼んだ始末。

 自分の不注意の怪我とは思うが、これだけ苦しめられるとメッタヤタラに切り過ぎた私に対して、森の精が怒りの鉄拳を下したのかしらと思えてしまう。でも、こうしてブログを書けるくらいに回復したので大丈夫ですからあ・・・

劇的ビフォーアフター

 二日続けての重労働でグロッキー気味のヒン馬を置いてメイとララと3人で山へ出かけた。あいにくの雨で雪が融け足下はザクザク。とりあえずは切るだけ切っておこうということで雑木をバッタバタ切り倒してゆく。片付けは来年にまわすことにして、林を眺めてみるとウッソウとしていた空間が開け明るくなった。

 ♪一歩踏み入ると、その先はウッソウとした森の中。陽が当たることもなく押し潰されそうに閉ざされた空間に挑む「匠」の技とは!?なんということでしょう!

 左の写真が手入れ前。右が間伐後・・・

 

 切った小木は、境界まで運び出し垣根として積んでゆく。ある程度の太さのモノは薪にする予定だが、我が家には薪ストーブも煙突の穴もない。いつか、薪ストーブの似合う家に住んでみたいなあ。

 ケチって安いチェンソーを買ったせいか、フルスロットルで回していると、すぐに燃料が尽きてしまう。何度も燃料とチェーンオイルを補給しなければならず効率が悪い。といって、もう1台買うのもシャクだし我慢して使うことにするが、いつも安物買いであとで後悔する。いくつになっても学習できない・・・

 5時間も山で過ごすと、さすがに冷えてくる。ときどき休憩しながら作業をするが、暖を取るといっても石油コンロひとつ。床には断熱材が敷いてあるので、足を伸ばしても寒くはない。ここでオニギリを頬張り温かい焙じ茶を飲むとホッとする。本当は、ジンギスカンを焼いてビールでも飲みたいところだが、危険な作業にアルコールは厳禁。というか、酔って寝てしまったら凍死するべな。

 現在、2棟あるレストハウスの手前しか使っていないが、農機具置き場と休憩スペースになっている。何年も前に電気を止めてしまったので照明はランプで懐古的な生活を強いられる。これでコタツでもあれば冷えた足を温められるのだが。

 

 今日も雑木を切りまくったが、運び出すのが重労働。重い木を引っ張っていると、まるで自分がバンバの馬になったような気がしてくる。メイとララは手伝いもせず駆け回るばかり。あんまりチェンソーを酷使したのでチェーンが外れてしまい作業中断。まだまだ手つかずのところが沢山あるというのに今年は、明日で店じまいになりそうだなあ。さあ今夜も呑んで寝るぞお。

 

 雪の積もる前に「下刈り」を済ませようと思っているが、野花南はすでに雪景色。まだ根雪にはならないだろうが、あと何度も行けそうにない。昼から出かけて寒風の中、作業をしたが効率が悪く時間がかかってしまう。やむなく帰りにホームセンターに寄り、大枚を払って一番小さなエンジン・チェンソーを買って来た。電動のほうが安いのだが、林の中では使えないのでしょうがない。「13日の金曜日」なので、チェンソーの大売り出し期待して行ったのだが、いつもと同じ値段。これで、大幅に作業が進むと思えば安いもんだ。次は、バンバン切りまくるぞぉ。ついに私は、ジェイソンになってしまった。

 それでも今日の作業で、多少は整備されてきた。まだまだ、この何十倍もの面積を下刈りするのだが、ホントに雪が積もる前に終わるのかしら。それにしても寒かったなあ・・・

 今日も一生懸命働いたあ!といっても本業ではなく、ん?どっちが本業なんだ。

 畑が終わり冬を迎えるこの季節、山では笹が枯れ雑草も朽ちてしまう。これから私は「林業」で忙しくなる。カラマツやトドマツ林には、笹が生えたり雑木が勢力を広げる。これを刈るのが「下刈り」。また、松の根元の「枝払い」をしなければ、まっすぐ勢いよく成長しない。美しい林の姿で春を迎えるには、雪が積もる前に作業を済ませなきゃ。

 細い雑木は、強靱な刃がついた草払い機で一気に刈っていく。枝払いの必須アイテムは「ナタ」。ナタを腰にぶら下げて歩いていると、立ち木が語りかけてくる「ナタでココを切ってね」。ナタデココ...

 ただ、どちらも太いモノを相手にするにはノコギリの出番となるが、これが重労働。寒い外での作業でも汗だくになってしまう。今、一番欲しいモノはと聞かれたら、即「チェンソー」と答える。ジェイソンのごとく「ウィーン・ウィーン」言わせて切りまくってやる。そうか、今週は「13日の金曜日」だ。買ってくるかなあ。ホームセンターでは、13日の金曜日にはチェンソーが飛ぶように売れるとか?そんな訳ないか。

 現在、左の写真の状態だが、目指すところは右の写真。でもなあ、こういう作業はヤッタだけ報われるから楽しい。

 

 結局、医業・農業・林業、どれが私の本職?あっ、もう一つあったな。ブロガー!ん?しょせんカネにならないのは本業じゃないか。

 そういえば前回書き忘れたが、このキノコ、足で踏んづけるとホワッとケムリが出てくる。「ホコリタケ」という名だが、私は「テッチャンタケ」と呼んでいる。なんでかってか?言えねぇ言えねぇ...

戦略的なヤドリギの実

 そろそろ冬の足音が聞こえてきそうな寒い一日だった。久々の野花南は晩秋のたたずまい。色づいた葉と落ち葉に埋もれている。

紅葉

 以前、「ヤドリギ」「ヤドリギを間近にみる」で書いた生命力旺盛なヤドリギが実をつけた。この実のタネの周りがネバネバしているので子孫を残すことができる。恐るべしヤドリギの知恵。

ヤドリギの実 宿り木の実

 栗のイガが落ちているが、まわりに実は見あたらない。リスが冬を越すために食べてしまったのだろう。

栗のイガ

ユキムシの舞う頃

 「その頃、と言っても大正45年のことで、いまから40数年前のことだが、夕方になると、決まって村の子供たちは口々にしろばんば、しろばんばと叫びながら、家の前の街道をあっちに走ったり、こっちに走ったりしながら、夕闇のたちこめ始めた空間を綿屑でも舞っているように浮游している白い小さい生きものを追いかけて遊んだ。素手でそれを掴み取ろうとして飛び上がったり、ひばの小枝を折ったものを手にして、その葉にしろばんばを引っかけようとして、その小枝を空中に振り廻したりした。しろばんばというのは"白い老婆"ということなのであろう。子供たちはそれがどこからやって来るか知らなかったが、夕方になると、それがどこからともなく現れてくることを、さして不審にも思っていなかった。」(井上靖「しろばんば」の冒頭)

 「しろばんば」とは、伊豆地方での雪虫の呼び名らしい。ユキムシは北海道独特のモノだと思っていた。井上靖の文体は、さすがに美しい。読んでいると、子供時代の同じような情景が目に浮かぶ。秋の夕暮れ、フワフワとカゲロウのように舞い、何かに触れるとそのまま命が絶えてしまう儚さ。ユキムシが飛び始めると、もうすぐ初雪が降る。

 夕方の散歩で、今年初めてのユキムシに出逢った。「ユキムシが舞う情景」をカメラに収めるのは無理だろう。仮にシャッターを切ったとしても、それはただの風景に過ぎない。人の心に儚さを想い起こさせる、言葉では表現できない「あの情景、あの雰囲気」を写し取ることは出来ない。

関連:雪虫の想い出

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