アソコの激痛

 雨の中のキノコ狩り。図鑑を開けないので、旨そうに見えるモノは手当たりしだい籠に入れる。結局、ほとんど捨てるのだが・・・

 というか、毒キノコのことも知らなければ命に関わるので、詳しく調べようとワザと持ち帰ったモノもある。「敵を知り己を知れば百戦危うからず」、相手の何たるかを熟知して克服しようという糖尿病のハウツー本に刺激されて、キノコ毒の害を調べてみた。

 イヤー、恐ろしいわあ。知れば知るほどキノコの毒が怖くなる。もし間違って食べて「アソコ」に激痛が走ったらなんて考えると、チャレンジどころかキノコ自体が食べられなくなってしまう・・・

 とは言いながら、まだ「アソコ」に激痛が走らないのをイイことに今夜もキノコ三昧の幸せな食生活を送っている。

●ドクササコ(毒):別名・ヤブシメジ、ヤケドタケ
 

 成長すると漏斗状になりカヤタケなどに似ているので、間違いやすい。これを食べると「地獄の苦しみ」を味わうらしい。

 食後3~4日すると手足の先に焼火箸を刺されたような痛みが広がり、火傷のように火ぶくれする。身体の末端部分全てに激痛が走るというから、オトコの場合は当然アソコも・・・(オー、痛そ!)

 その上、この症状は昼夜休むことなく1ヶ月以上も続くんだそうだ。成人では、死に至ることは稀だというが、それなら、いっそ死んだ方が楽かもしれない。コイツだけは、絶対口にしないぞ!

●ウスタケ(毒):特徴的なラッパ型

 持った手触りが堅めなので、歯ごたえが良さそうに思える。食べて7~8時間ほどすると、ムカつき・吐き気・下痢をもよおす。毒は茹でこぼすと消えるという説もあるが、試してみようとは思わない。「疑わしきは食せず」がキノコ狩りの鉄則・・・

●ドクベニタケ(毒)

 傘は鮮やかな赤色、ヒダと柄は白い。サークル状に輪になって生えることもあるが、この輪のことをヨーロッパでは、「フェアリー・リング(妖精の輪)」と呼ぶらしい。この輪の中に入ると妖精の世界から二度と帰ってこれなくなると言い伝えられている。ひょっとしたら毒にやられて、妖精の幻覚を見た人がいたのかも・・・

●下の二つは、図鑑で調べてもワカリマセン。
 

●ホテイシメジ(注意):別名、チョコタケ

 傘は漏斗状。このキノコを食べると、身体の中でアルコール分解酵素を一時的に壊してしまうので、アルコールを飲みながら一緒に食べると中毒を起こす。

▼ホコリタケ(幼菌は可食):別名、キツネノチャブクロ

 若いキノコは、中が真っ白でフワフワしていてハンペンのようだ。頭の部分の皮を剥きスライスしてバターで炒めて食べたことがある。旨くも不味くもない。かといって歯触りを楽しめるかといえば、そうでもない。特に食べたくなるような代物ではない。

 古くなると、褐色を帯びた茶色になり、踏んづけると頭のてっぺんの穴から煙のような胞子を吹き出す。これがホコリのように見える。完熟したモノを乾燥して漢方薬に用いるらしい。

▼タマゴタケ(食菌)
 

 また今日も見つけた貴重な1本。早速、炙って噛みしめて頂いた。上品な味わいなのだが、たった1本だと、ナンかモノ足りない。出来ればまとめて10本くらい口に入れて噛みしめてみたい・・・

▼ノボリリュウタケ(食菌)

 先日も1本見つけた。ヨーロッパでは食用にされるらしいが、まとめて採れるわけでもなく、たった1本を調理するのも面倒で、いつも捨てている。味を想像すると、癖がなくて歯切れが良さそう・・・

▼食生活を豊かにし、我が家の家計を助ける本日の収穫

 奥左からボリボリ、アイシメジ、ラクヨウ。その手前左から猫の舌、チョコタケ、ニカワハナビラタケ、アカモミタケ。一番手前左タマゴタケ、右オオツガタケ。

 今夜の食卓には、焼きタマゴタケ、ボリボリとオオツガタケの味噌汁、旨かったなあ・・・

猫とディープキス

 このところ、「決死の覚悟のチャレンジ」で連戦連勝という快挙を成し遂げている私だが、我が家にあっては、自分一人だけの孤独な闘いにすぎず、誰からも健闘をたたえる声援や賞賛の声すらあがらない。家内は絶対に冒険をしない。私が毒味をして「大丈夫だ」と言ってるにもかかわらず、絶対に箸をつけようとしない。

 だから、「オオツガタケのバター炒め」にしても「アイシメジのキノコご飯」にしても、想像するだけで口中にジュワーっとヨダレがあふれ出し、メクルメク快感の嵐に翻弄されそうになるくらい美味なる「焼きオオツガタケ」にしても、いっさい口にすることなく「ナンかあったらイヤだから。死ぬならアナタ一人にして」とホザいている。ただ唯一「ラクヨウキノコの味噌汁」だけは、オカワリするほど好きらしい。要は、私が採ってくるキノコを信用していないだけなのだ。というか、どうも私自身を信用していないフシがある・・・

 そんな家内でも、山のキノコの下処理はする。我が家では、洗ったキノコをスグに調理できる大きさに切りそろえ冷凍保存している。こうすると、いつでも好きなときに食べられるからだ。味噌汁でもキノコご飯でも炒め物でも、入れるだけでOKで超便利。ただし、出来上がったキノコ料理を食べるのは私だけなのだが・・・

 たまたま、冷凍庫を開けると冷凍キノコのフリーザーバックが沢山積んであった。何のキノコか確認しようと袋を見ると、マジックペンで「キノコ」と書いてある。さあすがぁ、中身がわかるように整理してあるんだ。エライじゃん。と思って、よくよく見ると中身はアイシメジなのだが、キノコという文字の横に不思議なマーク。「これ、なんだ?」と聞くと「毒キノコのマーク」という答えが。はあ・・?

 アンニャロー、俺が採ってきたキノコは全部毒だと思ってやがる。それで、いっさい口にしなかったわけだ。というより、ドクロの絵を描いたつもりらしいが、なんちゅうヘタクソな絵だ。これじゃドクロというより、手塚治虫の「ひょうたんつぎ」だ!

 昨日採ってきたニカワハリタケ、夕べのうちに茹で、スダチの搾り汁に砂糖を混ぜたシロップに漬けてある。あのプリプリ感からすると、ナタデココとかアロエとか寒天とかゼリーとか、はたまたコンニャクとかイロンナモノを連想してしまう。味はともかく、裏側が猫の舌のようにザラザラしているらしいのを見ると、口に入れた瞬間、猫とディープキスをしているような錯覚に陥ってしまいそうでコワイ。そんなモノを味わってしまったら、きっと悪夢にウナされるに違いない・・・

 ということで、このチャレンジはパスしようと半ば決めていたところ、日中、来客があった。折しもこのブログの数少ない愛読者の一人であり、あのキノコの結末がどうなったか非常に興味があるらしい。開口一番、「どう?食べた?どうだった?あの気持ち悪いキノコ」と、好奇心丸出しで迫ってくる。まだだというと「明日読むから、ちゃんと書いておいてよ」と言って帰っていった。

 エェーッ、結局、喰わなあかん羽目になってしまったあ・・・

 恐る恐るホンの一口噛んでみた。ん?ナニこれ?味はスダチの酸味と砂糖の甘みで普通に甘酸っぱくて旨い。この食感は、今まで経験したことがない。強いて言うなら柔らかいグミ。これはイケルわ。キノコ自体にまったくクセがなくシロップが染みこんでフルーティ、噛んだ断面は透明でモチモチ、完全なデザートだあ。言われなければキノコだとは思えない。世の中、見た目で判断してはイケナイという教訓のようなニカワハリタケであった。

 最近は、少しでも時間があると山荘を散策する。昼休みのほんの合間にボリボリを採ってきた。ボリボリは沢山生えているが、小さいので採るのが面倒になってくるのが贅沢な悩み。そんな中、かなり美味なタマゴタケを見つけた。毒キノコのベニテングダケや死亡例もある猛毒のタマゴタケモドキに似ているので要注意だが、柄の色と傘の裏の色が黄色いので区別できる。

 

 タマゴタケは素性がいい?キノコなので、本当は焼いて食べたいところだが、明日は出掛けて夜遅いので結局冷凍にした。後日、卵焼きに混ぜて焼いてみよう。だが、本当に間違いなく本物なんだろうなあ。

 まだまだ決死の覚悟のチャレンジは続く・・・

チャレンジ続編

 9月末ともなると日暮れが早い。ウカウカしてるとスグに真っ暗になってしまうので早めに仕事場を抜け出し、いざ行かんキノコ狩り。

 山荘では、そこらじゅうが天然のキノコ畑。足下を見ながら小一時間も散策するだけで、籠いっぱいになる。
 

 問題は、家に帰ってからの仕分け。食べられるモノ、そうでないモノを選り分ける。一度でも食べたことがあればスグに判別できるが、アヤしいものは悩みながら迷いながら図鑑やネットで検索。結果、可食として自信を持てるものだけが汚れを落として塩水に漬けられる。
 

 洗ったキノコ、左上からラクヨウ、オオツガタケ、ニカワハリタケ、左下がボリボリ、右下がアイシメジ、今日も大漁だあ・・・

 なかでも、ニカワハリタケ(別名:猫の舌)は、初ゲット。白くてプヨプヨしたゼリー状で半透明。手で持ってみると触感がフンニャラフンニャラ。朽ちてボロボロになった切り株に生えていた。傘の裏にツブツブが密集していて、これが猫の舌といわれる所以らしい。さっと茹でて甘いシロップに漬けたり、ジャムをつけたり、みつ豆に入れても美味しいというデザートになるキノコだそうだ。ポン酢にも合いそうなので、とりあえず茹でて冷蔵庫で冷やしてあるが、どうも見た目が食べてみたいという感じではない。
 

 先日の「チャレンジ後編」にも書いたが、オオツガタケ。焼いて食べると絶品ということなので、念願叶ってツイにヤッチャイましたあ。炭火で網焼きが最高なんだろうが、それほどの量もないので、お手軽にアルミホイルにのせてオーブントースターで・・・

 焼いただけのモノに醤油をタラして、んんんっ!こぉーれは旨い!先日のバター炒めでは、味わえない美味だ。この焼きオオツガタケ、不思議なことにホノカにスルメのような香ばしい香りがする。噛みしめるとジューシーな肉汁?が染みだしてくる。これは美味!どんな味だ?と聞かれても、この旨さは、食べたことのある人にしか絶対にワカラナイ味だ。とにかく旨いとしか言いようがない。

 ああ、今日もチャレンジの彼方に幸せが待っていた。

チャレンジ後編

 その後、ネットで調べていたら「オオツガタケは、割いて塩焼にするのが最高に旨い。煮たり炒めたりすると水っぽくなり、オオツガタケの持ち味が消えて、つまらないキノコになってしまう」という記事を見つけた。「オオツガタケに限らず、素性のよいキノコの多くは焼くのが一番」とまで書いてある。素性がイイって、どういうことなのかわからないが、たしかに松茸は焼いて喰うと絶品。

 ということは、悔しいことにバター炒めを味わった私は「つまらないキノコを喰ったオトコ」に成り下がってしまったようだ。こういうのを読んでしまうと、どうしても焼いて喰ってみたくなるのが人情。「ヨーシ、今度採ったらゼッタイに焼いて喰ってヤル!」とは思うのだが、そもそもアレがホントにオオツガタケだったのかどうかも怪しいところで、そこが問題なのだ・・・

 そして、まだまだチャレンジは続く。

 素性がイイのかどうかより、素性自体がワカラナイ「アイシメジ」らしきものだが、家内に無理言って炊き込みご飯にしてもらった。当然、毒味をした私に異常があれば、お釜マルマルのご飯を捨ててしまうという危険を顧みず、最もエキサイティングなチャレンジだ。

 ところがなんと、炊けてる途中から部屋中にイイ香りが漂いはじめ、最高に食欲をそそる。毒キノコにこんなワザができるわけがないと、勝手に自分を納得させ、期待に胸ふくらませて待つことしばし。炊きあがったキノコご飯に箸をつける。

 はあー、やっぱり私はキノコから生まれてきたんだあ。と思えるくらい幸せを感じる瞬間!これは旨い。シャキシャキと歯触りがイイ。毒キノコだなんて疑ってゴメンねと謝りつつ、オカワリをする。おいおい、キノコの毒より血糖値の方が心配なんじゃねぇのか・・・

チャレンジ

 山荘のラクヨウキノコは、目につく範囲でほぼ採り尽くしたので、あとしばらく待たなければ出てこない。他にいろいろな種類のキノコがあるが、詳しくない私にはどれが食用なのかワカラナイ。

 そこで、360ページもある分厚い図鑑を片手に散策する。まずは、見た目に旨そうなキノコに目をつけ、図鑑で調べておおよその見当をつけて採取する。あとは、家に帰って図鑑とインターネットで詳しく調べる。結局、大量に持ち帰ったキノコが食べられず、山からゴミを持ち帰っただけで終わることの方が多い。

 それでも、ときどき勇気を出して食べてみようかと思えるキノコに巡り会うこともあり、この年になって命を懸けた冒険をすることの楽しさを味わっている。というのも、調べた結果、どうみてもこれは○○タケに違いないと思えてしまうものがあり、半信半疑自信はないが捨ててしまうと、そこで終わるので、一応食べて確かめてみるというやり方を取っている。結果、腹もこわさず舌もしびれず痙攣も起こさず精神に異常をきたすこともなく生きている。

 本日の収穫、たぶんオオツガタケ?とアイシメジ?だろうという結論に達したのだが、調べれば調べるほど似たようなキノコがあり、可食なのか毒ありなのか自信が失われていく。ま、食べてみないことにはワカラナイと腹をくくって、オオツガタケと思われるものをバターで炒めて醤油を垂らして食べてみた。エリンギみたいな食感で旨味成分が濃く美味だったし、今のところ、どこにも異常なし。もう一つのアイシメジ?は明日に食する予定。なんたって訳のワカランのを二つも一緒に食べて、何かあったらどっちが原因かワカランでは困るので。

 

 明日は、アイシメジのキノコご飯がイイなあと考えているが、家族は嫌がって誰もつきあってくれないので、私一人分のオカズとして焼くか炒めるか、どっちかだろう。

 明日も命を懸けた冒険にチャレンジする!

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