私の田舎は、周囲を山で囲まれ盆地になっている。いわゆる電波の谷間だが、「au」も「docomo」も繋がるし地デジも映る。問題はラジオ、マトモに聴けるのはAM・FMともにNHKのみ。特に鉄筋コンクリートの我が家では余計に聴きづらい。それでもオーディオラックには、昔、札幌で使っていたTrioのチューナーが収まっている。T型フィーダーという室内の壁に貼るアンテナで雑音だらけのNHKFMを聴いている。いつか、屋上にFMアンテナを立て「AIR-G'」や「NORTH WAVE」が聴こえるようにしたいなあと思っていた。旨くいけば10年ほど前、私がDJをやっていた隣の隣の街のコミニュティFMも聴こえるかもしれない。と、期待しつつ冬の間に材料を仕入れていた。
屋上の雪もすっかり融け、絶好のアンテナ工事日和。
魚の骨みたいな形の八木アンテナ。組み立ててみると、意外に大きく長さは3メートルもある。
設置のあとの調整だが、横の長い棒を中継局の方向へ向ける。この状態でラジオを聴いてみる。今までと違って、全く雑音無くクリアに聞こえる。ただ、これはNHKFMだけ。他のFM局は、なんとか電波を拾うもののステレオにはならない。雑音も多く、聴きたくなるような状態ではない。きっと調整が悪いせいかしらと調整方法をネットで検索していると、重大な事実に気づいた。
今回、私が買った日本アンテナAF-7というのは、水平偏波用のアンテナとして売られていた。初めて知ったが、FM電波には水平偏波と垂直偏波という2種類があるらしい。水平偏波は、水泳のバタフライのような動きで水平に波打って進む電波。この電波を受信するアンテナは、よく見かける屋根の上のテレビアンテナのように地面と水平にアンテナ棒が並んでいる。対して垂直偏波は、へびのように左右に蛇行しながら進む電波。これを受信するアンテナは、地面と垂直にアンテナの棒が並んでいなければならないという。この水平偏波と垂直偏波、それぞれ送信中継局によって異なり一般的には水平偏波が多いらしい。私の田舎には四つの中継局がある。そのうちの一つ、たまたま私のエリアの中継局だけが、テレビ、FMいずれも垂直偏波。これは北海道内の中継局の中でもかなり珍しいケースであると書いてある。
なあーんだ、違うじゃん。アンテナを選ぶときから間違ってたじゃん。よもや、アンテナ買い換えかと思ったが、要は横向きのアンテナを縦向きにすればイイと云うことらしく、それ専用の金具は付いてないので、あり合わせの材料で修理して付け替え。アンテナ設置が終わり最終調整。NHKFMはクリアなステレオだが、他の放送局は「聴こえるけど」というレベルでFM本来の音ではない。それでも室内アンテナのときは、全く聴こえなかったのだからヨシとしよう。
地形的に完全盆地のこの辺りは結局、電波の谷間にあって「ラジオ放送」は趣味の域を出ずユニバーサルサービスではない。需要の多い「テレビ」や「通信」だけがユニバーサルサービスであるのは、地理的な谷間のせいだけじゃなく政治力の谷間にあるような気がしてきた。