トキメキの季節がやってくる。キノコのことを考えると、居ても立ってもいられないので横になってキノコ図鑑を眺めている。今年初めてのキノコ狩り。というか、どんな具合かしらと山荘へ下見に出かけた。なんと今年最初のゲットが、あの美味なる「タマゴタケ」。傘が開いて大きくなって食べ応えありそう。
ラクヨウは時期的に早いが、裏が管孔(スポンジ状)になっているイグチ系のキノコを見つけた。ヤマドリタケモドキのように見えるが、ヤマイグチかドクヤマドリということもあるので持ち帰って図鑑で調べることに。図鑑で見比べ、インターネットで調べる。「たぶんこれだろう」という結論に達するが、あくまで「たぶん」の域は出ない。あとは実食で確認することに。まさに命がけのトライアル。久々にワクワクする興奮。
もし、これがヤマドリタケモドキであれば、フレンチで云うところの「セップ茸」、イタリアンでは「ポルチーニ茸」、ヨーロッパのマツタケと呼ばれる「キノコの王様」「香りの女王様」。とりあえず、スライスして干してみた。外で天日にあてていたら雨が降ってきたので部屋干しに変えたが、これが臭いのなんの。部屋中、魚の干物のようなスルメのような動物性の強い匂いが充満。当然、家族からはヒンシュクもの。ここまで香りが強いと料理に使うのも躊躇してしまいそうだが、これが旨味成分だとすると、かなり濃厚な出汁が期待できそう。どちらにしても野花南産ポルチーニの乾物を味わうのは、少し先になりそう。
タマゴタケは早速、味噌汁にして頂いた。タマゴタケの黄色い色素が落ちて、まるでカボチャの味噌汁のような色になる。滋味溢れる旨味成分が口中から脳天まで広がり「はあー、幸せだなあ!」という気分にさせてくれる。ラクヨウキノコの味噌汁にも匹敵するほど旨い。味がどうのこうのというより、言葉に尽くせぬ安らぎと充足感に満たされる。まるで母なる大地に抱かれているよう。やはり、私はキノコから生まれてきたのかも。
と思って調べてみたら、タマゴタケの色やカタチは、あの派手な色彩の毒キノコ・ベニテングタケによく似ている。どちらも同じテングタケ属。ベニテングタケに含まれる毒成分のイボテン酸は非常に強い旨味成分(味の素のグルタミン酸ソーダの約16倍)であり、幻覚作用をおこすという。同じ属のタマゴタケにも強い旨味成分と幻覚を起こす物質が入っているのだろうか。そのせいで私は、幸せな気分でいられるのかもしれない。それとも、誤ってベニテングタケを食べて、単に幻覚を見ただけなのだろうか。