本日(9/9)午前零時、ビートルズのデジタル・リマスター盤が世界同時発売。銀座のレコード屋さんでは、夜中に行列ができたとか。違うか、今はレコード屋さんじゃなくCDショップと言うんだっけ。デジタルというくらいだから、もちろんCDでリリース。初期のアルバム4作はステレオ音源にリマスターされたらしい。
今だに根強いファンがいるビートルズだが、それぞれの年代によって受け止め方はイロイロなんだろうなあ。すでに人生の下り坂を歩いている私が、今の若い人たちに唯一自慢できることといえば、ビートルズとリアルタイムで過ごしてきたということくらいだ。中学2年の時、「プリーズ・プリーズ・ミー」を、それに続く「抱きしめたい」を聴いたときの心の高ぶりは、それまで聴いていたクリフ・リチャードやポール・アンカやプレスリーでは到底感じられなかったモノ。ナニかが違う。理性で感じるのではなく肌で感じるナニかが違う。曲のテンポにカラダが反応する。そこからヤツラとのツキアイは始まった。
音楽的な変遷は目まぐるしく変わり、ロックン・ロール時代からラバー・ソウルあたりの美し過ぎるメロディを経てサージェント・ペッパーからアビーロードへと移りゆく。私にとって最高傑作と思われたラバーソウルを凌ぐアルバムを次々と出してゆく。一時私は、ヤツラはきっと宇宙人に魂を売った代わりにメロディを与えてもらってるんじゃないかと真剣に考えたことがある。それほどに美しく、かって誰もが創り上げることができなかったメロディが次々と発表された。結局、それが今スタンダードナンバーとして私たちの周りに満ちあふれている。
これまでヤツラと長くツキアッテきた私だが、夜中に並んでまでリマスターCDを買おうとは思わない。デジタルだとかモノラル盤がステレオになったとか、そんなことはどうでもイイことだ。どうせ高域なんか聴こえない年齢になってきたということも理由の一つだが、私は昔、音を聴いていたのではない。音楽を聴いていたのだ。お小遣いを貯めて、やっと手に入れたスピーカーが1個しかついていない卓上レコードプレーヤーで、サファイア針が擦り切れるまで、ビートルズと一緒に幸せな時間を過ごしてきた。
そんな想い出をデジタルだとかイイ音だとかで聴きなおしたとしても、あの頃の感動を手に入れることはできないだろう。だから今だに赤盤のレコードでヤツラと一緒に時を過ごしている。
当時、東芝からでていたビートルズは、赤い透明なレコードだった。レコード界の技術革命、静電気が起きず永久にチリホコリがつかないといわれた「EverClean」という赤いレコードは今だに健在で、今でも充分私に温もりを与えてくれている。