ウィズ・ストリングスは冬に限る

 行って来ましたぁ、ナベサダのコンサート。札幌コンサート・ホール・キタラ。「ウィズ・ストリングス」。いわゆるヒモ付き。とっても素敵なコンサートでした。まっ、なんといっても「ウィズ・ストリングスのコンサートは冬」に限るですよね。「渡辺貞夫・バラード・ウィズ・ストリングス / クリスマス・コンサート」と云うくらいのタイトルですからねぇ。とってもロマンティックな雰囲気になってしまう、そんな演奏でした。当然、会場はカップルでイッパイなのだ。

 どうして、「ウィズ・ストリングスのコンサートは冬!」ということにこだわるのか。

 なんたって、ウットリするようなイイ雰囲気ですからねえ、恋する人々にとっては最高のシチュエーション。ナベサダが、アルト・サックスをソプラニーノに持ち替えた瞬間、そこは、まるでケニー・G の世界。カップル同士が周りの視線に隠れ、手を重ね肩を寄せ合い自分達の世界に浸ってゆく。

 そしてコンサート終了。会場を出る。外は真っ白な雪の世界。街灯に照らされて雪が舞う。マイナスの気温の中「寒くないかい?」なんてことを言いながら、互いに肩を寄せ腕を組み、彼のコートのポケットの中で彼女の指を握り締め、白い息を吐きながら歩く。うーん、なかなか絵になるじゃないですか。

 まずは、お洒落なレストラン。あまり明るくない店の方がいいなぁ。薄明かりの中で、テーブルランプの灯りだけというのがベスト。ワイングラスをカチンと合わせ「今夜はアリガトウ!あなたの音楽の趣味って素敵よね。うふん♡」なーんてことを云われてごらんなさい。たまりませんよお。でも注文した料理には、あまり手をつけず。互いに「コノアトノ展開」にナニかを期待して、あまり食欲がない。身も心も温かくなった頃、ついに店を出て向います。

 高層ホテル

 眼下に夜景を見下ろす部屋。二人は窓辺にたたずみ夜景を眺めながら、どちらからともなく身体を寄せ合い。なーんていう展開になってしまうんですねぇ。ウィズ・ストリングス・コンサートのあとは(ホンマかいな?)

 ですから、これはゼッタイ寒い季節じゃないとダメなんです。この状況を猛暑の夏に置き換えて想像してみて下さい。「ナンデこのクソ暑いのにベタベタすんのさ!」って云われるのが落ちですから。

 季節的にも絶好調のそんな夜、純真無垢な下心を持った私は、開演ギリギリに会場に着きました。ところが、待ち合わせのエントランスに居るはずの彼女の姿が見えない。そこで携帯に連絡を入れると、なんと!

 「ゴメンなさい、仕事が入ったの」

 「えーっ!」ドタキャン!

 胸いっぱいに膨らんだ純真無垢な下心の捨て場所もなく私は寂しく会場へ。カップルで溢れた会場の中。私の隣りの席だけがポッカリ空いていて男がポツンと一人。「ほらっ、ねぇ、あれ、あの人、ドタキャンされたんじゃないの?」なんて声が周りから聞こえてきそうな雰囲気の中、開演を待つ。まっ、別にイイけどさ。あの会場の中で下心もなく純粋に音楽を聴いていたのは、きっと私一人だけだったと思うよ。

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