コンコード・ジャズフェス

 1階7列26番

 これが札幌コンサートホール・キタラ大ホールでジャズを聴くベストポジション。ということで行ってきましたあ。富士通コンコード・ジャズフェスティバル。なんたって、目当てはスコット・ハミルトン。まさに肩の凝らない楽しいジャズ。スィング、いやニュー・スウィング。自然にカラダが揺れてくる、そんな雰囲気のとっても楽しいイベントでした。

 ところが、それ以上にヨカッタのが、サイラス・チェスナットのピアノトリオ。「若手の中で誰よりも早く個性を確立した若き巨人」と云われるだけのスゴイ奴。なかでも、出だしで「ん?」と思わせるケリー・ブルーは最高のパフォーマンス。きっとウィントン・ケリーも、あの世から絶賛の拍手を送ってるんだろうなぁー。ただ、40才の若さであのカラダ、あんなにデブでエーンカ?きっと長生きせんよなー。

 そしていよいよ、ハリー・アレンとスコット・ハミルトンのダブル・テナー。なんたって、リズムセクションの豪華さというか高齢化というか、往年の偉大なミュージシャン達、ピアノのジョン・パンチ(82才)、ドラムスのジェイク・ハナ(71才)、ギターのバッキー・ピザレリ(77才)、49才のハミルトンが子供、それより12才も年下のアレンなんか、まるで孫のよう。でもそんな組み合わせがイイんですねぇ、どこか和やかで。レスター・ヤング、コールマン・ホーキンス、ベン・ウェブスターを彷彿とさせる彼らのテナーに自然とカラダがノリノリ。と思ったら、隣の奴がカラダを揺らしてるもんだから、こっちの椅子まで揺れてやんの。

 そうこうしてるうちに、ラストナンバー。たまたま縁あって一緒に連れていった隣席の女性、カラダが大揺れに揺れてきて、とってもノリノリのご様子。アドリブのあとの拍手の仕方も興奮気味。演奏後半のフォーバース、フロントとドラムスが交互にフレーズを回し始めた頃、キタラ大ホールに響き渡る大きな声で突然叫んでしまった。

「へイ、ドラームッ!」

 ジャズとは云え、コンサートですぜ、ライブハウスじゃないんだぜ。聴衆の目線がいっせいに、こちらに。それどころか、ステージの連中の目線までもが。エッ?誰?この人?オレ知らない。オレ一緒に来てない。オレ無関係。と、座席にもぐりこんでしまった私。一瞬、キタラ大ホールの空気が止まってしまったかのような緊張が走ったのも束の間、会場の雰囲気が一挙に盛り上がってきましたねぇ。というのも、その声に反応してハミルトンとアレンがサッと脇にしりぞき、フォーバースを中止。なんとドラムソロが始まってしまったのだぁ。

 会場はヤンヤの喝采。延々と続く71才ドラマーのソロ、それに追い討ちをかけるように、またまた隣の女性

「へイ、カモーンッ!」

こっちの方がデカかったねさっきの声より。ステージの連中、今度は嬉しそうにこっちを見てニヤリ。なによりもジェイク・ハナ、嬉しそうにブラシを置いて、指でスネアを叩き始めてしまった。大サービスだ。そしてあの指を滑らせてのトン・ツ-を試みたがうまく音が出ず苦笑いというかバンドのメンバーに笑われるシーンも。会場は大喜び。

 実はこの女性、ジャズのコンサートは初めて。普段は、クラシックにオペラを聴くという御婦人。そんな彼女をして、ここまでノリノリに盛り上げてしまったステージの連中もエライが、どうしてここまでストレートに感情をあらわにする彼女もエライ。

 うーん、長年付き合ってきて初めて見ましたねぇ、家内の別の一面を。

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