小雨に煙る昼下がり、今日も木こりに出かけた。多少の雨は暑さを和らげ涼しく作業がはかどる。高さ20メートルはあるトドマツを伐り倒すのだが、最近やっとチェンソーワークに慣れてきて思い通りの方向に倒すことができるようになった。伐倒方向を定め、受け口を調整し反対側から追い口を入れると地響きを立てて巨木が倒れる。まさに圧巻。寸分違わず狙い通りにいけば、まさに快感。
伐倒後、太い枝はチェンソーで切り落とし細い枝は鉈で払い落す。払った枝を片付けてから、丸太を35センチで玉に切る。エンジン運搬機で何度も運んで軽トラに積みこむと一段落。
ポツポツ降ったりやんだり、ずぶ濡れにならず作業を終えるころ陽が差してきた。雨上がりの日差しは空気が澄み切っているせいか、木々が輝き美しく見える。
帰り支度を済ませ山荘出口に向かうと、目の前の田んぼにエゾシカの姿。えー、それってマズイじゃん。「おーいこら、シカられるぞ!早く出れや」。ウチの山の周りには、延々と防獣電気柵が張り巡らされているというのに。カメラを向けていると、田んぼを抜け道路を横切り矢野沢林道入り口のほうへ。
矢野沢林道に向かう道は、山荘に面しているが唯一電気柵が施設されていない一画。そこからなら鹿だろうと狐だろうと熊だろうと、キノコ泥棒やコイ泥棒でさえ誰でも自由に出入りできる。地主の私はといえば厚手の手袋で感電を恐れながら入り口の電気柵を外さなければ、クルマを乗り入れられないというのに。こんなに自由に鹿が行き来できるのなら、いったい何のための電気柵なのさ。過去に何度か誤って触れたことがある。「電気が走る痛み」なんて表現は優しすぎ、「鋭利な鈍器で思いっきりブン殴られたような痛み」にビックリして身体が固まってしまう。たぶんシカも何度か経験して学習したんだろう。秘密の通路から出入りしてもシカらないから、田んぼにだけは入らないで。そのうち撃たれたらカワイソウだべさ。
結局、脱獄したエゾシカは山荘内に舞い戻り林の中を散策後、私に挨拶をして去っていった。