今から30年以上前、仕事も遊びも半端なく忙しかった頃。何かに追われるように日々を過ごし、自分のための自分だけの時間というものに飢えていた。そんなとき没頭したのが「大人のオモチャづくり」。深夜、帰宅してから黙々と木を削り研磨する。それだけで心落ち着く自分だけの時間を過ごし、結果として「コリントゲーム」「対戦型テトリス」「バックギャモン」が出来上がった。次の作品は「オセロ」と決めていたが当時、無敵だった私が小学生の三男にどうしても勝つことができずいつもボロ負け。あまりの悔しさに「オセロ」製作には至らなかった。
ボードゲームには、まったく運に作用されず実力のみで戦うものと、ある程度の運が勝ち負けに影響するものがある。それまで作ってきたものは、サイコロの出目やルーレットの示す結果に左右されるものばかり。ツキが勝利の女神を連れてくるスタイルなので、スリリングで面白く興奮のルツボにハマる可能性も大なのである。ところが、オセロに関してはツキに左右されない。将棋や囲碁など実力を伴う勝負を好まない私は、どうも運のみで生きてきたようだと最近気がついた。
5歳の孫とオセロで遊ぶようになった。3歳の孫も参戦するが、途中で盤面がグチャグチャ。案の定、駒を紛失。終盤が戦えない状態なので、丸く切り抜いた紙を黒く塗り代用している。マグネットの駒だけを探したが、バラ売りはないようなので一念発起。30年前を想い出し木工でオセロを製作することにした。丸棒を鋸で輪切りにしサンドペーパーで磨く。駒ができたら盤の製作。穴を開けたベニヤを同じサイズのベニヤに重ね貼り合わせ、細い角棒で縁取り。手作り感満載だが、ニスで塗装するとソレなりに格好よく見える。もし駒を失っても丸棒さえあれば、いつでも補給できる。
まだ5歳なので教えながらワザと負けたりしているが、いつか敵わなくなる日がくるに違いない。その時、このオセロを作ったことを後悔するのだろうか。負けず嫌いのジイジ。
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