職場の隣にアパートが建つらしい。整地のため空き地の雑草が刈り取られ、ウチの診療所裏の雑草が、かなり目立つようになった。移転してから3年間、一度も刈ったことがないため伸び放題荒れ放題。山荘から草払い機を持ってきて草を刈る。草丈の高い雑草を刈るのは大変な力仕事。汗がダラダラ、特に鼻と口まわりの汗が溜まりベタベタになるので途中から防塵マスクをはずしての作業。
草を刈ると草の臭いがする。マスクを外したので、より強く感じる。当たり前のことだがフキを刈るとフキの臭い、ヨモギを刈るとヨモギの臭い。生い茂る草から立ち上がるムッとする熱気を「草いきれ」というが、それを刃物で刈ってゆくのだから、当然臭いが強くなる。この臭いに癒されることも、私の草刈りが好きな理由の一つかもしれない。
全体の3分の2くらい刈り終えるころ、どこかで嗅いだことがある特徴的な香りが漂い始めた。ん?バジル?ハーブの香りに違いないが、この香りの名前が思い浮かばない。ハーブの香りがする雑草ってあるのかなと思いながら、どんどん刈り続ける。あたり一面だんだん香りが強くなるので、作業を中止して足下の草を観察。これかなと思う葉っぱを千切った途端、強烈な臭い。まさしくこれ。あっ、アレ。アレだよアレ。すぐにアタマに浮かんだのは結婚式の披露宴の最後に出てくるアイスクリームに乗っているアノ小さな葉っぱ。ミントだミント。アイスクリームに乗ってるヤツより数倍デカイがまったく同じ香り。見渡すとそこらじゅうに生えている。「シメシメ、これはいいモン見つけたワイ」と、早速草刈り中止。カゴを持ってきて座り込んでミント狩り。
しかし、ミントに詳しくない私なので、「毒ミント」なんてものがあったらどうしよう?と家に持ち帰りネットで調べてみる。ミントといってもいろんな種類があることが判明。ペパーミントにもブラックペパーミントとホワイトペパーミントがあり、スペアミント、リンゴの香りがするアップルミント、グレープフルーツミント、パイナップルミント、ペニーロイヤルミント、カーリーミント、オーデコロンミント、オレンジミント、ライムミント、ラベンダーミント、生姜の香りのジンジャーミント、クールミント、ホースミント、ケンタッキーカーネルミント、キャンディーミント、ハッカと呼ばれるジャパニーズミント、カニングハムミント、ウォーターミント、バナナミント、コルシカミント、コーンミントなど多くの品種がある。
リンゴの香りのアップルミントや生姜の香りのジンジャーミント、それぞれの香りに由来する名前がついているようだ。ん?ケンタッキーカーネルミントってサンダースおじさんの香りなのか?
この中で食用にしない方がイイと云うのが、ペニーロイヤルミント。防虫剤になるらしく大量摂取による中毒死事例があると書かれている。画像で検索すると、それではないので一安心。本日ゲットしたのは、スペアミントのようだ。ミントは、どれも繁殖力が強くどんどん増えるという。この土地は、かって営林署が建っていた場所で裏に職員住宅があったはず。誰かが植えたハーブが自生して増えたのだろう。そういえば、かって健康食品といわれたコンフリーも数多く自生している。
いつもなら私が採ってきたキノコは一切口にしない家内だが、ミントの草の香りを嗅ぐと大喜び。早速、水で洗い熱湯を注ぎミントティーを淹れることに。水洗いしているあいだも家じゅうがミントの香りで満たされてくる。お湯を入れた瞬間、葉の色が青々に変化。カップに注ぐと緑茶のような湯の色。一煎目の熱いのを口にする。うん、アイスクリームに乗ってるアノ葉っぱの味、ほのかな甘みが口の中に広がる。ミントティーなどというコジャレタ飲み物は初めての経験だが、これはイケル。この熱々を氷を満たしたグラスに注いでアイスミントティーにすると、サワヤカの一言に尽きる。残ったミントはドライにするため軒先につるした。まだ沢山生えているので、しばらく楽しめそうだがミントの収穫時期が終わるまで草刈りは中止。
今夜は、気取ってミント風呂にでも入ろうかと考えている。きっとミントの香りが身体中に染み込んでオジサンでもイイ香りになれるかも。でもミントってことは、いわゆるハッカ。ハッカ臭くなるってことかあ。ハッカ臭いって云われるならイイけど「ハンカクサイんでないかい?」って云われないだろうか。
(※ ハンカクサイは、北海道の方言)