子供の頃、食べていたが最近口にすることがなくなった「想い出の味」にグスベリがある。その辺りの草っぱらに生える子供の背丈くらいの低木、夏の終わりに実をつけた。薄緑色の透明な小さな実の表面にスイカ模様の白い線があり、かなり酸っぱかったように覚えている。よほどオヤツに飢えていた時代、お腹を壊すまで摘んだ記憶がある。あれだけアチコチに生えていたグスベリだが、最近ほとんど見かけない。知らなかったがグスベリは熟すと紅くなり甘くなるらしい。そうなる前に食べ尽くしていたせいなのか紅く色づいたグスベリの実の記憶がない。(グスベリは北海道の方言。正しくはグーズベリー。gooseberry、ガチョウのベリー)
同じように「懐かしい味」にオンコの実がある。近所の庭や生け垣で、秋になると真っ赤な実をつけた。小学校の帰り道、摘んでは口から種を吐き出し甘い果肉を楽しんだ。大人になってから知ったがオンコの実、果肉以外は有毒で種を飲み込むと危険なのだそうだ。あれだけ食べて、よく危険な目に合わなかったものだと今更ながら胸を撫で下ろしている。
山荘では、オンコの実が盛り。子供の頃と違って摘んでみたいという気にならないのは、満ち足りた食生活のせいなのか。オンコは、北海道の方言らしいがアイヌ語ではない。正式には、一位(イチイ)。他にはシャクノキ、アララギ、アカギ、スオウ、ミネズオウ、アブラギなどの別名もあるらしい。木材としては年輪の幅が狭く緻密で狂いにくくヒノキより堅い。聖徳太子が手に持つ「笏(しゃく)」の素材であるとのこと。オンコの木は雌雄異株、山荘では実のなる木は横に広がり低木だが実のならない雄木は背が高い。