新旧交代を象徴する縁起物。艶々で光沢を放つ葉は、遠くからでも目立ち存在感がある。エゾユズリハ(蝦夷譲葉)、山荘のアチコチに見かける。雨でもないのに濡れたようにピカピカ輝く様は、どの葉っぱより美しい。若葉が伸びると古い葉が落ちる。つまり子が成長すると親が譲るという子孫繁栄を象徴する縁起のよい木。正月のしめ飾りや鏡餅にこの葉が使われる地域もあるらしい。別名ショウガツノキ、オヤコグサ。
もともとは内地に生息するユズリハが、多雪地帯に適応して低木化したもの。枝がしなり折れにくく、特に山荘のような豪雪地では樹高が1mにも満たず地を這うように広がる。葉下の脇に小さな花を咲かせ、秋には藍黒色のブルーベリーのような実が熟す。残念ながら毒性アルカロイドが多く食べられない。雌雄異株であり、下の写真には夫婦仲良く並ぶ姿が。右の大きな個体が♂で実をつけず、左の小さな個体が♀で実をつけている。ちなみに雌雄異株は「しゆういかぶ」ではなく「しゆういしゅ」と読む。
常緑広葉樹だが、太陽光が減少し気温が低くなり「葉緑素」が壊れると「カロチノイド」のため黄変する葉もある。黄葉しても葉の表面の艶の美しさは変わらない。
「ゆづり葉」河井酔茗
子供たちよ。
これは譲り葉の木です。
この譲り葉は
新しい葉が出来ると
入れ代つてふるい葉が落ちてしまふのです。
こんなに厚い葉
こんなに大きい葉でも
新しい葉が出来ると無造作に落ちる
新しい葉にいのちを譲つて――。
子供たちよ。
お前たちは何を欲しがらないでも
凡てのものがお前たちに譲られるのです。
太陽の廻るかぎり
譲られるものは絶えません。
輝ける大都会も
そつくりお前たちが譲り受けるのです。
読みきれないほどの書物も
みんなお前たちの手に受取るのです。
幸福なる子供たちよ
お前たちの手はまだ小さいけれど――。
世のお父さん、お母さんたちは
何一つ持つてゆかない。
みんなお前たちに譲つてゆくために
いのちあるもの、よいもの、美しいものを
一生懸命に造つてゐます。
今、お前たちは気が附かないけれど
ひとりでにいのちは延びる。
鳥のやうにうたひ、花のやうに笑つてゐる間に気が附いてきます。
そしたら子供たちよ
もう一度譲り葉の木の下に立つて
譲り葉を見る時が来るでせう。