ANAプレミアムシート

 今週月曜に急な案内があり、昨日金曜7日に日歯連盟理事会が開かれた。夏休みで帰省が始まろうというこの時期、そんな急に言われても飛行機のチケットを予約するのは至難の業。それでも羽田へ向かう便は、特割の安いチケットこそないが普通料金でならナントカなる。しかし、帰りの羽田発はすべての便が空席待ち。しかもプレミアムシートしか空いてない。しょうがないので高いシートで予約した。

 会議が終わり帰路、5時半過ぎに羽田に着いた私は、いつものように空港内のタバコが吸える喫茶店で時間を過ごし、ちょうど夕飯時。ANAの売店で「牛肉弁当と黒烏龍茶」を買い、6時15分発のプレミアムシートに座った。さすがに広くて快適だ。いつも機内で弁当を頂くのは水平飛行になってからにしているのだが、なかなか出発しない。予定を15分も過ぎてから機長のアナウンス。「沖縄から乗り継ぎのお客様の便が遅れているため、もうしばらくお待ち下さい」とのこと。

 「ナンダまだ出発しないのなら、今のうちに食べてしまおう」と封をあけ、すき焼きがタップリ入った弁当を食べ始めた。ところが口をつけた瞬間、ドアが閉まり飛行機は動き始めた。それでも離陸前には食べ終えるかなと半分ほど頂いた頃、さすがプレミアムシートの待遇は違う。CAさんが冷たいお茶を持ってきてくれた。そしてなんと「上空でお食事を用意していますよ」と言うのだ。だって今、食べてるじゃん。「いえ、いいですよ」と遠慮がちに言うと「料亭のお料理ですよ」とオッシャル。「もー、早く言ってよ。お姉さん!」

 でも、すでに食べ始めた弁当。途中で止めるわけにもいかず、いかにも「私は、この牛肉弁当が好きで好きでタマラナイのだ」という顔をして全部タイラげた。タクシーウエィを過ぎ、滑走路に着いた飛行機は、またまた停まったまま動かない。再度、機長のアナウンス「前の飛行機が部品を落として離陸したので、現在滑走路を点検中です。しばらくお待ち下さい」とのこと。「エーッ!前の飛行機は大丈夫なんかい?」と思いながら待つことしばし。30分遅れて、やっと離陸した。

 料亭料理だとしても「これ以上食べられんわ。寝てりゃ食事もパスだろう」と眠りについた。ところが、配膳の音で目が覚めてしまったので、やむなく私の目の前に「二段重ねのお弁当」が置かれた。隣の人がフタを開けたのを見ると、ナルホド豪勢だ。お持ち帰りしようと思ったら「食品衛生上の理由により、お食事のお持ち帰りはご遠慮下さい」とフタに書いてある。昔から「食べ物を粗末にしてはイケマセン」とシツケられた私なので、というより「イヤシイ性格」なもんで私もフタを開けた。「お飲み物は?」と聞かれたので温かいお茶を頂いた。なんと、その上ダシのきいた温かい味噌汁までついてくる。

 隣の人が「お飲み物は?」と聞かれて「白ワイン」と応えた。「エーッ、酒もアリかよ」と見ていたら、小瓶のワインとカップが。後ろの席では「ビールはナニがあるの?」「エビスにアサヒのスーパードライにサントリーのプレミアム」。へぇ―、さすがにプレミアムシート。でも、千歳からクルマの私は呑めない。

 この弁当、福井市にある料亭「開花亭」というお店の料理らしい。いわゆる懐石の盛り合わせ。ご飯が冷たいことを除けば、かなりのご馳走だ。大昔、スーパーシートと呼ばれていた席に座ったときは、サンドイッチ程度の料理だったのを覚えているが、プレミアムシートというのは、かなりのアップグレードなのだということを事ここに至って初めて気づいた。お腹イッパイのはずの私は親のイイツケを守り、すべてタイラげてしまった。苦しーい。

 最近、何でもブログネタにしてしまう私なので、この豪勢な弁当を携帯のカメラで撮影しようと思ったのだが、トンデモナイ田舎者に見られるんじゃないかしらと躊躇してしまった。そんな田舎者の隣に座る一見リッチそうな紳士、赤ワインをオカワリして最後にコーヒーで締めくくる姿を見ていたら、場慣れした雰囲気に、きっと田舎の歯医者より稼いでるんだろなあと思えてしまう。

 千歳に着きクルマに乗った私は、どうにも苦しくてベルトをはずし、チャックを下ろし苦しいお腹を解放しながら運転して帰ってきた。今考えると、途中で事故でも起こしクルマの中で意識を失う私の姿を見て「この人、クルマの中で何してたん?」と言われるかと想うとゾッとする。

 JALの「クラスJ」はプラス1000円。ANAの「プレミアムシート」はプラス7000円。そら価値あるわなあ。

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