あと1日半働くと、住み慣れた診療所ともお別れです。先代から私に代が変わるとき、私の思いのままに建て直してから30年間。雨の日も風の日も景気のイイときも悪いときも、ずーっとここで頑張ってきました。予約制でない時代は、一日百人なんてこともザラで先代と私と弟で目の回るように仕事に追われていたことも。
私一人になってからも、一日70人くらいの患者さんを診て自分の城を守ってきました。今から思うと隔世の感があり、自分の年とともに患者さんも高齢化し減少し、今でこそちょうどよい診療システムに落ち着いた頃、息子が自分の思いのままに自分の城を建て、これから守っていきます。
こうして時代は流れ、親から子へと受け継がれていくのが自然の摂理なのでしょう。私は人生の下り坂を歩んでいくことになりますが、寂しさはありません。肩の荷が下りた気楽さといえば隠居じみていますが、どこかフッと気が抜けた安寧な気分を楽しんでいます。
とはいえ、まだまだオマケで働かなければならず、感傷に浸る暇はなさそうです。この週末は引っ越しに追いまくられ新しい環境に慣れるための訓練もしなければならず、ただただ息子の言われるままについて行くだけです。
そうは言っても、この病院での最後の患者さんを見終わったとき、どんな想いが私の胸によぎるのだろう。