初雪

子供の頃から、初雪の日には、とてもうれしい気持ちになります。
もちろん今、この年になっても・・・・・。
季節の変わりめを肌で感じ、きっと、これから何かが変わる。
そんな気持ちにさせてくれるからでしょうか。
初桜、初落ち葉なんて言葉が、あったとしても季節の変わりめを感じるには、初雪の前ではとうてい色褪せてしまいます。
きっと、北国の住人でなければ理解できないのかもしれません。
また、あの白く美しい別の世界が訪れる・・・・・。

どういうわけか、初雪の日には必ずうれしいことがありました。
学生時代、大好きだった親友が欲しくてたまらなかったフィアット800という車を買った日、いの一番に私のところへ見せにきてくれた日は初雪でした。
高校生の頃、お小遣いを貯めて欲しかったレコードプレーヤーを手に入れ、荷物をかかえお店を出たときも初雪が降っていました。
小学校 2年のとき、オール5を取ったら買ってくれると約束していた自転車が、やっと鉄道便で送られてきて、木枠に梱包された自転車を駅まで受け取りにいった帰り道、薄暗い空から雪が舞っていました。
鼻のあたまに汗をかいていたこと、言葉にならないくらいうれしかったこと、どんより曇った空の色のことは、今でもはっきり憶えています。
小さなうれしいことをあげると、きりはないけれど、初雪はうれしいということを知っていた私は、ぜったいに雪虫に触れて殺すようなことはしない子供でした。

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