2002 8/18 (日) 22:00〜0:00

この週末を札幌で過ごしてきた私ですが、
気温のわりには木陰の入るとさわやかな風が・・・
うーん、もう秋風が・・・

ジャズの背教者・レジスタンス、オーネット・コールマン・・・
ビーバップのルールを完全に破壊して独自のアプローチでインプロヴィゼーションを展開、そしてその影響を受けたエリック・ドルフィー、ともに独自の個性を展開しつづけた両者ですが、既成概念を破壊することから新しいものを創り出してゆく姿勢には感嘆の念を抱かずにはいられません。
そんな意味では、コルトレーンやマイルスと違ったカタチでスゴイなと思います。

今週、私にこの曲を選ばせるにいたった1通のメールがあります。
東京の有名なジャズファン、ヤギさん(仮名)から頂いたお便りでした。
(実は、この番組をインターネットラジオを通じて聴いて頂いているのですが・・・)
8/4に放送した「もうひとつのマイルス」というテーマの中で取り上げた電化マイルス、エレクトリック・マイルスについての、私の発言「ビッチェズ・ブリュ−以降のマイルスは聴かない」に対してのご意見でした。

ここに、ヤギさんのお便りの全文を掲載いたします。

「ヤギの戯言」

ZENAさんこんばんは、はじめてお便りを出します。
いつもすてきな選曲で楽しく番組を聴いております。
8/4の放送で「ビッチェズ・ブリュー以降は聴かないんですよ」
と話していましたが、私のマイルスに対する意見を述べたいと思います。
まずは問題の「ビッチェズ・ブリュー」ですが、「カインド・オブ・ブルー」でモード手法の完成させたにも関わらず、さらに新しいサウンドにエレクトリック・マイルスとして飛び込んで行ったアルバムだったと思います。
当時の私にしては高価なアルバムを買ったのは大学3年生(1972年)だったと思います。どんなものでも吸収する年齢だったのでしょう、少し毛色の異なった音くらいの感覚で聴き込んでいけました。
ウエイン・ショーター、ジョー・ザビヌル、チック・コリア、ジョン・マクラフリンが複雑なリズムに乗せて、アドリブを集団でやる演奏に今までにないサウンドを感じました。全身でロックやアフロビートに浸るために、このLPだけはスピーカーではなくヘッドホーンで聴く方が好きでした。
頂点に達するとそれを惜しげもなく捨て去って新しいことに挑み、暫くは周囲から十分な理解を得られずともいつのまにかそれを突き破って再度、頂点に達していくことを繰り返した革新者マイルス、彼いわく「オリジナルであれ!」。
今までのジャズとは大きく変化した「ビッチェズ・ブリュー」ではファンは戸惑いました、しかし常に前向きなマイルスは、過去と決別して新たな創造に向かっていた。その結果、多くのミュージシャンがマイルスの音楽に刺激を受け、大きく影響されて70年代のジャズの流れとなった。

この時代を彩る最重要グループ
ウエイン・ショーター、ジョー・ザビヌルのウエザー・リポート、
チック・コリアのリターン・トー・フォエバー、
ジョン・マクラフリンのマハビシュヌ・オーケストラを生み出し
ハービー・ハンコックのヘッドハンターズにも影響し
キース・ジャレット、ジョン・コルトレーン、オーネット・コールマンなどのモード手法の子供たちの土壌になった。

「ビッチェズ・ブリュー」によって幕を開けたフュージョン時代だが、これを基点としていろいろな音楽が始まった。フュージョンといってもさまざまな音楽との組合せがあり、ロックやファンクにとどまらず、クラシックや民族音楽との融合もある。また多くの実験的な演奏もフュージョンという名のもとに行なわれ、いわゆる4ビートジャズの存在は霞んでしまったが、この時代は音楽が非常にたわわな花果を実らせた時代であった。
なおかつ、この「ビッチェズ・ブリュー」なくしては80年代後半からのウィントン・マルサリスの出現によるジャズの本流への回帰もなかったに違いありません。

JAZZは流れています、とどまる事なく変化しています、時にはよどみ、逆流し、ある時は急速に流れています。
もう多数の灰色の細胞が死滅し、硬くなった脳味噌ではヒップポッップは楽しめませんが22才の私でしたらどんなものでも受け入れて消化吸収して行くのでしょう。だって私たちの世代はビートルズを受け入れ育ったのですから・・・
最後に、この放送を聴いた40年前のZENA少年たちが大人になって音楽大好きオヤジになってほしいと思っています。

と、いうお便りでした。
目からウロコが落ちた私でありました。
そうなんですよね。たしかにあの頃は私もフュージョン・ジャズに浸っていたんですよね。
でも、いつしかそんな時代があったなんて事は忘れて、懐かしいハード・バップのみが頭の中に残ってしまっている自分が居るんですよね。
やはり、年を取り過ぎてしまったんでしょうか・・・
あの当時の私達がそうであったように、今の若い人達が、どんな音楽でも吸収できてしまうという事実に目をつぶっていたのかもしれません。

良かれ悪しかれ、自分の好みを押し付けてしまうというジャズファン特有の資質を、私も持ち続けているんでしょうね・・・
だから、私もりっぱなジャズファン!なんて開き直る気はありませんが・・・

これからの番組構成にとても参考になるお便りでした。
ヤギさんのお便りに深く感謝します。ありがとうございました。


ARTIST TITLE GENRE
ORNETTE COLEMAN The blessing Jazz
ERIC DOLPHY Number eight Jazz
OLIVER NELSON Screamin' the blues Jazz
GIGI GRYCE Strange feelin' Jazz
GIGI GRYCE Blues in bloom Jazz
JANET SEIDEL Comes love Jazz
DINAH SHORE Anniversary song Jazz
DINAH SHORE For sentimental reasons Jazz
DINAH SHORE Golden earrings Jazz
DINAH SHORE The gypsy Jazz
DINAH SHORE Buttons and bows Jazz
KITTY KAREN It's been a long, long time Jazz
PEGGY LEE On the sunny side of the street Jazz
LESTER YOUNG Red boy blues Jazz
JOHNNY COLES Hobo Joe Jazz
JOHNNY GRIFFIN 63rd street theme Jazz

午前零時からの「ZENAセレクション1枚のアルバム」
SCOTT HAMILTON / East of the sun


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